可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 クロダミサト写真展「裸婦明媚」

クロダミサト写真展「裸婦明媚」を鑑賞しての備忘録

神保町画廊にて、2018年10月5日~21日。

 

壁面に、文庫本程度の大きさだろうか、正方形の写真が整然と並べられている。いずれも画廊で撮影された女性のヌードで、複数のモデルが繰り返し登場する。ただし、モデルのポーズや写された部位は様々で、モノクロームとカラーが混在し、赤みが強調されたものなど色味も多様である。

「何かを社会に発信したい、私の体で何かを変えられる、
その彼女たちの言葉から私はヌードが持つ強さを感じた。」という作家のコメントが会場の入口に掲げられている。

大きくプリントした写真を1点1点間隔を空けて並べれば、1点1点を鑑賞する作品として鑑賞者の前に立ちはだかるだろう。そうではなく、規格の揃った小さな作品を数多く並べることは、インターネット上で、有名無名を問わず同じパッケージで発信される情報の表現形式を擬えているのだろう。規格を揃えながら、被写体のポーズやパーツ、写真の色味がバラバラであることは、ネット上の表現のメタファーであることを強調している感がある。

歌ったり、踊ったり、自己を表現する方法は様々であるが、その中で、身体を見せる(ヌードになる)のは、極めてシンプルでありながらストレートな自己の表現手段だ。ネット上で多くの星をとるような「美しい」とか「綺麗」という評価軸ではなく、モデルの姿をそのまま曝していくことで、モデル個々の個性を表現している。数値化への大きな波に抗してまさに身体を張る表現者の姿を作家は呈示するのである。