展覧会 名和晃平個展『Biomatrix』を鑑賞しての備忘録
SCAI THE BATHHOUSEにて、2018年10月10~12月8日。
会場の奥に、床面を嵩上げした空間があり、その中央にオレンジ色の水をはった生け簀のような作品が設置されている。この作品は《LIQUID》と名付けられており、メタリックオレンジの液体が格子状に並び、それぞれの中央部から空気が吹き出して泡をつくる。泡の現れるタイミングも、発生する泡の大きさ(吹き出す空気の量)も区々である。
液体は水では無くシリコーンオイルに金属粉と顔料を混ぜたもので、仕切りが存在するように見えるが、実際には空気の噴出の動きによって押し出された褐色の部分が膜のような仕切りを描いているだけという。
天井からの照明に照らし出され、ぬるっとした光沢感を持つ液体、その表面に空気が送り込まれ、泡が現れる一瞬に生じる音、整然と区切られたグリッドが、泡の大きさによって歪んでいく様子。美しいと表現していいかどうか迷うような得体の知れなさが、この作品にはある。何かが産み出されようとしているという期待を観る者に強く抱かせると同時に、その何かが生命に関わるような印象が引き起こす不遜な感覚を覚えさせるからではないか。座りこんで見入らせるだけの魅力をこの作品は備えている。