可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『キリシタンの遺品』

世界文化遺産長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」登録記念『キリシタンの遺品』を鑑賞しての備忘録


東京国立博物館(本館特別2室)にて、2018年10月10日~12月2日。


今年(2018)年7月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録されたことを記念した企画。東博は、江戸幕府長崎奉行所が没収したキリシタン信仰の遺品や弾圧に用いた踏絵などを収蔵している。

東博所蔵品では「親指のマリア」として知られるイタリア製の聖母像が有名だが、本展での陳列はない。

ザビエルは日本で初めてキリスト教を布教した人文として知られるが、イエズス会の創設メンバーの一人で、初代のインド管区長(?)を務める大物だった。

1614年に全国に禁教令が布かれ、1637年に島原・天草一揆が起こると徹底され、1644年には最後の宣教師が殉教した。幕末の開国後、長崎に宣教師たちが大浦天主堂を建設すると、潜伏キリシタンが訪れ、禁教下の日本でキリスト教の信仰が持続していたことが明らかになった(日本でのキリスト教信仰は絶えたと考えられていたという)。

冒頭で展示されている、全体に傷んだ聖母子像の光輪部分。輝きが残っているのだが、周りがくすんでしまったせいで相対的に輝きを増していて印象的だ。

禁教のために採用された「絵踏み」というのは、為政者にとってどのように捉えられていたのだろうか。徳義を否定するシステムだ。拷問による自白の強要よりははるかに穏便であるし、信仰という目では捉えられないものを捉えるためには実用的であったがゆえに採用されたのだろうが。「文治政治」への転換以前に始められた制度だろうが、朱子学による理論武装で統治の正当性を訴えた公儀は、絵踏みをどのように位置づけていたのかが気になった。