展覧会『資生堂ギャラリー100周年記念展 それを超えて美に参与する 福原信三の美学 Shinzo Fukuhara / ASSEMBLE, THE EUGENE Studio (1st)』を鑑賞しての備忘録
資生堂ギャラリーにて、2018年10月19日~12月26日。
写真家であり資生堂の初代社長でもある福原信三が、資生堂ギャラリーを開設してから100年を迎えるのを記念して開催される企画。年内の1stと年明けの2ndの2つのパートからなる。
銀座の目抜き通りの地下に広がる広大な空間が、現在の資生堂ギャラリーの特徴。その空間の壁に棚を設えて福原の写真やこまれまでの展覧会のカタログなどを並べている。また、会場内に椅子と机を数多く設置しているので、カタログを閲覧したり、タブレットPCで資料映像を座って自由に鑑賞できる。
福原信三と資生堂ギャラリーのアーカイブ展である。配布されるプリントの説明を読み、積極的にカタログや動画を閲覧をしないと、会場を周遊するだけでは福原信三の仕事や資生堂ギャラリーのあゆみは見えてこない。
これは本展の意図として、福原が「人々が出会い、自由に対話することができ、さまざまな新しい価値観を共有し合えるオープンな場」を重視していたことから、その理念を実現しようとしたからだ。ギャラリーを来場者の交流のための空間としても提供しているのだ。
来場者が福原の理念に共鳴するとして、来場者が「新しい価値観を共有し合える」役割を担うのは容易ではない。無論、あくまで理念であって、およそ来場者にそのような役割を求めるものではない。ただ、その理念を実現するには、自由度が高するかもしれない。来場者がこの企画に関わる仕掛けのようなものが用意されているとよい。
「それを超えて美に参与する」は福原の言葉。福原の遺した200本以上のテキストから抽出された「それを超えて美に参与するとすべく則ち、私は画家で、ブラッシ、絵筆に代る化粧品を以て美の本拠をつかんとする」に基づく。福原は、写真が美術と同等以上の地位を得るには、「美の約束」(美の規範)が必要と考えていたという。そして、「写真芸術は絵画の完成展がその出発点」と捉えており、ここにも「それを超えて美に参与する」との姿勢が見られる。