可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『日本のアートディレクション展2018』

展覧会『日本のアートディレクション展2018』を鑑賞しての備忘録

ADC非会員作品はクリエイションギャラリーG8にて、ADC会員作品はギンザ・グラフィック・ギャラリーにて、ともに2018年10月29日~11月22日。

アートディレクター80名から成る東京アートディレクターズクラブ(ADC)。その会員の審査により行われる年次公募展(昨年までは「ADC展」として開催)。2017年5月から2018年4月までに発表、使用、掲載されたCM、ポスター、パッケージなど約8,000点から選出された入賞作品およびノミネート作品を紹介する。

ADC賞を受賞したDouble A「Obsession for Smoothness」は、紙の広告で、OK Go(オーケー・ゴー)というアメリカのロックバンドのミュージック・ビデオにもなっている。メンバーによるパフォーマンスが展開される空間の壁面には多数のプリンターが設置されている。そのプリンタが印刷・排出する紙がつくるイメージを利用した、コマ撮りアニメーション作品である。排出された紙が地面に落ちる際に、その紙の陰になるイメージを隠してしまうため、その部分をカットする編集を施している。その欠落部分を補うために動作を36倍にした上で早回しにしているという。メンバーのぎこちない動きは、宙づりにするためのワイヤーをあえて見せていることとも相俟って、却って印象的な映像作品になっている。

同じくADC賞を受賞した神戸新聞社の新聞広告「SINCE 1995」は、同社の新聞の創刊120周年を記念したもの。阪神淡路大震災によって何を手に入れたのか、建造物の補強工事や耐震貯水槽といったハードから、トリアージや被災者の支援の法律といったシステムまで、大きな写真とその脇の簡潔な文章で紹介している。写真の下半分を大胆に黒い画面で覆っているのが目をひく。災害によって失われたものを暗示するとともに、これから手に入れる未知のものへの模索も象徴している。

同じくADC受賞の大塚製薬「ポカリスエット」のコマーシャル・フィルム。高校生の潑剌とした群舞をフィーチャーした作品自体も魅力があるが、アート・ディレクターのコメントが面白い。ぜひ会場で読んでもらいたい。

同じくADC受賞のサントリー「休み方改革!」のポスター。「COFFEE」の文字列にOFFを発見したのはたしかに面白い。ただ、その手のアイディアでは、RENAISSANCEの中に見出したNISSANの方が遙かにインパクトは大きい。

原弘賞を受賞した「ゆらぎ ブリジット・ライリーの絵画」展(DIC川村記念美術館)のカタログ。実寸よりかなり小さくなってしまうカタログで作品の魅力をいかに伝えるかに腐心し、原寸の図版をも加えている。真っ白な表紙にカタカナで「ライリー」と書き込んだのも斬新。外国人が著ている謎の日本語のTシャツやタトゥーのようだ。