可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『村上友晴展 ひかり、降りそそぐ』


展覧会『村上友晴展 ひかり、降りそそぐ』を鑑賞しての備忘録
目黒区美術館にて2018年10月13日~12月6日。

村上友晴の個展。
キャンバス一面に黒い絵具が盛られた作品で知られる。それは、ペインティングナイフで置かれた絵具が無数の凹凸をつくり、光を吸収するとともに反射して、黒い画面の中に光と陰を感じられる、暗闇の中に一縷の光を求めるかのような作品。闇が深いほど、光は強く感じられるだろう。
紙に赤い水彩絵の具を塗り込めた作品(1980年)では、紙の持つ表情が露わにされる。《聖夜》と題された作品(2007年)では、紙に墨や油絵具や鉛筆を使って着彩するだけでなく、鉄筆を使って削ることで、紙の物質感が強調され、平面の中に空間を起ち上げようとの試みが窺われる。《マリア礼拝堂》と題された作品(2012年)では、鉛筆とニードルを使った淡い灰色の画面が、礼拝堂の内部空間を紙上に封じ込めようとしているかのようだ。
洞窟壁画や土器や青銅器への線刻など、削る・刻むという行為には祈りに通じるものがある。《十字架の道》(2001年)などで行われているニードルを用いて紙に描く手法は、原初的な祈りを捧げることであるのかもしれない。

 

使い込んだ漆器の印象を受ける作品は、黒の油絵具と赤のアクリル絵具を重ねてつくられている。

 

《マリア礼拝堂》や《十字架の道》などを展示する展示室Bは、床面の絨毯を剥いでコンクリートを剥き出しにし、壁面の塗り込めた白と相俟って、静謐な空間をつくっている。作品の設置位置を通常よりも高めにしているのも、やや仰ぎ見るような構造を設定しようとしたためだろう。

また、展示室Cでは、2つの展示台に3,4の小石を並べる。これは村上友晴の作品ではなく、時間の経過を想起させるべく設置されたものという。とりわけ作品自体との関係でどこまで空間に装飾を入れ込むかは難しい。設置意図をくむのは容易ではないかもしれないし、設置の仕方に工夫の余地はあるが、意欲的な試みではある。

展覧会が「ホワイトキューブ」一辺倒ではなく、様々な色の壁紙で飾られた空間で行われることは常態になっている。色自体も一定の見方を方向付けるであろうし、そもそも展示順や作品のピックアップも作品や作者に対する態度を表している。ホワイトキューブも「ニュートラル」な空間ではありえないのだ。東京国立博物館(平成館)の特別展のように、来館者を小馬鹿にするハリボテを設置するのは論外としても、企画意図を示すための小道具を設置することは、企画者の積極的なアプローチとして、評価したい。