展覧会 『ステファン・ブルッゲマン個展「“HA HA WHAT DOES THIS REPRESENT? WHAT DO YOU REPRESENT?”」』
KOTARO NUKAGAにて2018年10月20日〜2018年12月20日。
TERRADA Art Complex 内にオープンしたKOTARO NUKAGAの第一回展。
ステファン・ブルッゲマン(Stefan Brüggemann)はロンドンとメキシコシティーを拠点とする美術家で、本展が日本では初の個展となる。
「ハイパーポエム・ペインシング(HYPER-POEM PAINTINGS)」、「パドル・ペインティング(PUDDLE PAINTINGS)」、「カートゥーン・ペインティング(CARTOON PAINTING)」の各シリーズを紹介する3つのセクションで構成。
「ハイパーポエム・ペインシング(HYPER-POEM PAINTINGS)」について。
このシリーズは、A4サイズの白色のオフィス用紙にゴシック体(?)の英語2~3語からなる英文(英語句)をモノクロ印刷したものを何枚も用意し、それをカンヴァスに重ねていくことでつくられたもの。"FORGET THIS DEVICE"という英文の作品なら、紙の重ね合わせの結果、"FOR""GET""TH""IS""DE""VICE"のように分断された文字が画面に現れる。"FOEGET"(忘却せよ)が"FOR"(むかって)"GET"(入手せよ)に、"DEVICE"(装置)が"DE"(〔仏〕から)"VIDE"(悪徳)というように受け取れる。「この装置を忘却せよ」というメッセージが「悪徳からこれを手に入れるために」に転換しているように読める(英語のネイティヴがどのように解釈するかは不明だが)。
ギャラリーで配布されている解説シートには、用紙のカンヴァスへの貼り付け作業は「非常にスピーディーに行われ」るそうだ。そして、「あらゆる情報や物事が高速で処理され伝達される今日の社会において頻出する用語(ボキャブラリー)」が「アーティストがしばしば用いる手法であるトートロジー(同語反復)」によって「'詩’を創」り、「高速化(Hyper Speed)された社会の即時性を表わすかのように産み出されたこの'詩’は絵画となる」とのこと。
情報の繰り返しの伝達は、情報の価値を高めるのではなくむしろ逓減させていく。また繰り返される中で情報は断片的していくことになる。画面に用紙が重ねられていくことで情報が断片化し、消失していく過程を描いた「絵画」である。
他方、詩の役割が声なきものの声を聞くことにあるなら、かつて自然環境の中から石ころや山の声を聞き取ったように、情報化社会の中からオフィス機器やインターネットの声を聞き取ってもいいだろう。断片となった文字にあえて意味をよみ読み取ることで「詩」が立ち現れる。