可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』を鑑賞しての備忘録

工務店で働くラクシュミは愛妻家。タマネギを切る機械や自転車の補助席など、妻のために折りあるごとに手先の器用さを活かしたものを作る。その妻は慣習に従って、「毎月5日間」、「穢れ」のために家の外側に設えられた場所で過ごさなくてはならなかった。のみならず妻が不衛生な布を用いて処置し、「恥」の意識から洗った布を他の衣類で隠して干していることに気付いたラクシュミは、テレビ・コマーシャルで知っていた生理用ナプキンを薬局で手に入れる。「禁制品」のように手渡されたナプキンは55ルピーと予想外に高かったが、通りすがった友人に借りて何とか買うことができた。ところが妻はナプキンが高額で、牛乳を買うことも困難になると使用することを拒絶した。香具師ハヌマーンの見世物には平気で50ルピーを散在するのに、健康のために清潔なナプキンを利用できないのはおかしい。ラクシュミは買ってきたナプキンを分解し、見よう見まねで自作することにした。
ところが、手製のナプキンを妻は利用しようとしない。そこで、女子医大生に協力を求めたり、近所で初潮を迎えた女の子に利用してもらい、妻のためのナプキンを完成させようと必死になる。ラクシュミの行為は奇行として噂になり、妻は「女性の恥」にこだわる夫についていけなくなる。そして、遂に自らを「被験者」とした実験に失敗したことをきっかけに、妻と別れ、村を出ることになる。

生理用ナプキンの開発に異常なこだわりを示すラクシュミに、周囲が奇異の目を向けるのはやむを得ない。しかし、ラクシュミは仕事に対して完璧主義者で、仕事を始めたら完成まで諦めない。愛する妻のためであるならば、なおさらだ。妻は実家に連れ戻されてしまい、自分の思いとは逆に状況はますます悪くなっていく。ラクシュミは、妻を思って、何としても完璧な作品を開発しようと努力を重ねていく。

月経を穢れとして扱う慣習に加え、ナプキンの値段が高すぎることが、ナプキンが普及しない原因だった。ラクシュミはいかにしてナプキンの開発のみならず、気軽に利用できるように安く手に入れることにこだわった。そして、ついに安価に清潔なナプキンを製造することに成功するが、それでも、ラクシュミのナプキンは受け容れられない。医学的・衛生的に正しいナプキンができても、だ。失意のラクシュミに、事態を好転させる出来事が起きる。

圧巻は、ラクシュミの功績が認められた後、国連に招かれてニューヨークで演説を行うシーン。たどたどしい英語で訴えかけるラクシュミーに、観衆同様、感銘を受けることになる。

インドでは、2001年にナプキンが非常識なものとして捉えられていると驚くなかれ。マラソンや水泳など、スポーツと月経は今でも「問題」であり続けている。月経についての常識や理解は、対岸の火事ではない。