可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 諸川もろみ個展「今日も生きておる」

展覧会 諸川もろみ個展「今日も生きておる」を鑑賞しての備忘録
新宿眼科画廊(スペースM)にて、2018年12月7日~12日。

レシートの裏に描かれた絵日記のような作品。

描かれるのは、主に、楕円形の顔にきらきらした大きな目をもつ、親しみとおかしみと不思議さとをあわせ持った、作者自身を反映したキャラクター。楕円形の顔の輪郭は太陽系であり、吸い込まれそうな大きな目は宇宙空間なのかもしれない。とにもかくにも、そのキャラクターが、レシートの空間を所狭しと奮闘する日々が描かれていて、なぜだか引き込まれる。

絵を描いたレシートを縦に繋いだものを上から垂らして、
カーテンのように並べている。
レシートのカーテンは内側に絵を描いた裏面が、外側に印字のある表面が見えるようにコの字形に配されている。
絵を表に向けて壁面に貼ってしまうとレシートの印字面が見えなくなるので編み出された展示方法だろう。

展示空間という公開を目的とする場に、私生活の一端が赤裸々になるデータを並べるというのは、SNSを通してプライベートを曝す行為のアナロジーになっているようだ。
また、レシートのカーテンに仕切られた空間は、展示室の中に入れ子的にもう1つの展示空間を設けているとも評価できる。その仕切りが壁ではなく「カーテン」である点は、作品の持つ、現実と創作との間を融通無碍に往還する性格が象徴されているかもしれない。