可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 松浦悠子個展

松浦裕子個展を鑑賞しての備忘録
GALLERY b. TOKYOにて2018年12月10日~15日。


ギャラリーへ向かう階段を降りる際に、下方正面に見える「片足」が壁に掛けられているのが目に入る。灰色に近い色を持つ皮膚の表面には、ただれたような部分がある。漆芸によって、うるしのかぶれを表わした作品。

"japan"は「漆」や「漆工」を指すくらいだから、漆芸作品は数多作られてきただろう。だが、漆によるかぶれを漆芸作品に仕立て上げた者は果たしていたのだろうか。

本展のクライマックスは、メインヴィジュアルに採用されているトルソのような作品。胴体と左脚とから成る。「皮膚」だけからなる軽やかなこの漆器は、彫刻とは違い、表面をひたすら味わうことのできる作品だ。漆の塗布と研磨によって浮き出した模様は、大理石や鉱物を想起させる様々な色と形を所々で見せる。綺麗な肌ではなく爛れた皮膚を持つ体の表面に視線を這わせていくと、言いようのない魅力があり、容易にはその行為を中断しがたくなる。これがかぶれるということなのだ。