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芸術鑑賞の備忘録

映画『マダムのおかしな晩餐会』

映画『マダムのおかしな晩餐会』を鑑賞しての備忘録

 

パリの屋敷で暮らし始めたアメリカの富豪フレデリクス夫妻。夫婦仲は悪くはないとしても冷めている。ボブ(Havey KEITEL)はフランス語の家庭教師ファニー(Joséphine DE LA BAUME)にご執心で、アン(Toni COLETTE)はフランス人のアントワーヌ・ベルナール(Stanislas MERHAR)とたびたび密会している。
ある日、ボブの先妻の息子で作家のスティーヴン(Tom HUGHES)が突然屋敷に来訪し、その晩に行われるパーティーに参加することになる。13番目の参加者に戸惑うアンは、スペイン出身で10年来のメイド・マリア(Rossy DE PALMA)を14番目の招待客に仕立て上げることにする。北アイルランド出身のアート・ディーラーであるデイヴィッド・レヴィル(Michael SMILEY)は見慣れないマリアを見咎め、スティーヴンに尋ねたところ、身分を隠しているが実は両シチリア王家の末裔だと耳打ちされる。
マリアはアンに飲み過ぎず、笑いすぎず、などと言い含められていたが、高級ワインの美味しさについ杯を重ねて口を滑らせていく。飾らないマリアの振る舞いにデイヴィッドは感銘を受け、惹かれていく。
パーティーの最中にマリアはアンに下がるよう指示され姿を消す。マリアを諦められないデイヴィッドはスティーブンを通してマリアの連絡先を聞き出し、2人の中は進展する。
アンはマリアにデイヴィッドから早く手を引くよう命じるが、ボブが横やりを入れる。ボブの資金繰りは実は良くなく、ニューヨークの銀行家から督促を受けていて、屋敷にあるカラヴァッジオの《最後の晩餐》を売ることで弁済しようと考えていた。ボブがデイヴィッドに鑑定を依頼し、アントワーヌに作品を売るプランを実現するに当たり、商談が成立する前にフレデリクス家の信用性を揺らがせることは得策ではないと考えていたのだ。
アンは、メイドをパーティーの招待客にしていたという嘘がばれることよりも、マリアが恋を成就させていくことに対する嫉妬心を大きくしていく。マリアの娘に対する支援などを引き合いに出して、マリアをデイヴィッドから引き離そうとする。

 

原題は"Madame"。「マダム」はアンのことだが、マリアのアンへの呼びかけの言葉でもある。同じ「マダム」という一単語の内実がどう変化していくのか。邦題ではずらされているが、実はメイドのマリアが主人公の作品である。パーティーで嘘をつく(招待客を演じる)よう諭したアンに対し、嘘はつけないとアンの依頼を誇示しようとしたマリア。冒頭から虚飾と質実の対照がはっきりしていた。結果的に嘘をつくことになったマリアがどのような運命をたどるのか。

 

基調はコメディ。マリアのパーティーにおけるジョーク。50代男性のモノとかけてクリスマスツリーと解く。その心は。

アメリカ、イギリス、フランス、スペインといったお国柄も題材に。

カラヴァッジオの《最後の晩餐》の真贋、言葉を話さない音楽家の演奏の素晴らしさ、ビュランの列柱の意味合いの変化(新旧の文化の衝突)など、美術に関する話題も鏤められている。

編集者が督促に来ても何も渡すものがないと嘆いていたスティーブンが、マリアを通して小説"Maid"を書き進めることになる。

"Y la baila and he dances y la canta"
久々に"Aserejé"を聞いたが、やはり気分が上がる曲だ(そしてサビの意味が全く分からない)。