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芸術鑑賞の備忘録

映画『メアリーの総て』

映画『メアリーの総て』を鑑賞しての備忘録

 

メアリー(エル・ファニング)は、『政治的正義』で知られる作家ウィリアム・ゴドウィン(スティーヴン・ディレイン)と、『女性の権利の擁護』を著した女性権論者メアリ・ウルストンクラフトの娘。父の営む書肆で店番をしながら読書や執筆に明け暮れていた。母はメアリーの産褥熱で落命し、継母とは折り合いが悪かったため、メアリーは隙を見ては母の墓で思索に耽っていた。
母娘の険悪な関係を憂慮した父は、メアリーをスコットランドの友人の元に逗留させることにする。そこで、メアリーは駆け出しの詩人パーシー・シェリー(ダグラス・ブース)と運命的な出遭いを果たす。
実家に戻ったメアリーを追ったパーシーは、ウィリアムに師事する形で家に出入りするようになった。メアリーは、パーシーに妻子があることを知り咎めるが、パーシーは「自由恋愛」を説いてメアリーとともに駆け落ちすることにする。その際、メアリーの義妹であるクレア・クレアモント(ベル・パウリー)を伴うことになった。
裕福なパーシーだったが、妻子を捨てたことで父の怒りに触れて援助を打ち切られ、生活は不安定になった。しかもパーシーの「自由恋愛」を受け容れることができないメアリーはパーシーの行動に苦悩し、とりわけ、パーシーとの間に生まれた子を失ったことが大きな痛手となった。

 

フランケンシュタイン』で知られる作家メアリー・シェリーの青春時代を描いた作品。本作では、パーシーとの関係に加え、母が自分を産んで亡くしたことや、子供を失った苦悩が、「怪物」を産み出す要因であったことが示されている。
また、降霊術や、電気を用いた科学的な見世物が、死者の復活や人間の創造といったアイデアにつながっていったと描かれている。

 

フランケンシュタイン』の原稿を出版社に持ち込むも、若い(当時18歳)女性であるメアリーの作品は、様々な理由を付けられて受け容れられなかった。何とか出版にこぎつけた際にも「匿名」が条件で、夫の序文を要求されるという屈辱をメアリーは味わわされることになる。この作品の日本公開時(2018年12月)の新聞には、医大入試における女性差別と、それを正当化しようとする大学側の愚にもつかない主張が記事になっていた。200年前との重なり合うのが唾棄すべき事情であるのが悲しい。

 

詩人のバイロンが重要な人物として後半に登場する。メアリーの義妹であるクレア・クレアモントが、バイロンとの関係を取り結ぶ重要な役回りを果たすことになる。