展覧会『小さいながらもたしかなこと 日本の新進作家 vol.15』を鑑賞しての備忘録
東京都写真美術館にて、2018年12月1日~2019年1月27日。
「自らの感性や考え方、アイデンティティやリアリティを手がかりに、社会との関わりを意識しながら個人的な視点で作品を制作する5名の作家」の作品を展観する企画。
森栄喜は《Family Regained》シリーズ(2017年。写真10点及び映像作品2点)と映像作品《Ltter to My Son》(2018年)の計13点を、細倉真弓は《川崎》シリーズ(2016年。写真)8点と映像作品《Dance》(2017年)の計9点を、ミヤギフトシは《Sight Seeing/感光》シリーズ(2018年)の写真・映像各5点を、河合智子は《On the Origin of Springs/泉の起源について》の映像とスライド(2018年)、《Berlin》シリーズ(2018年)の写真4点の計6点を、石野郁和は《Melon Cream Soda Float》シリーズ(2018年)の写真16点を、それぞれ出展している。
ミヤギフトシ《Sight Seeing/感光》について。
黒い遮光カーテンを開けて入る暗い展示スペースには、男性の肖像写真が5点、壁に掛けられている。モデルは全て異なるが、いずれも夜、暗い室内で、窓から入る光だけで撮影されている。長時間露光のために生じたわずかなブレのためか、あるいは写真の展示方法(モニター?)のせいか、息づかいが聞こえ、今にも動き出しそうな生々しい姿が映し出されている。露光時間が長くなればその分だけ被写体を多く捉えることができるとか、作者が注ぐモデルへの眼差しをより多く共有できるとかいった錯覚に陥る感覚を覚える。モデルは作家と面識のない男性で、作家がその人が住む部屋での撮影を持ちかけて撮影したという。続く空間では、撮影の際の様子をビデオカメラで撮影した映像作品5点が紹介されている。窓から入る光が明るく、モデルや室内の様子がある程度認識できる部屋もあれば、撮影に用いているカメラの液晶パネルの光しか見えない情景もある。そこで交わされる撮影のために必要な最低限の言葉とプラスアルファの言葉が、そのまま写真として結実している。