可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『世界のブックデザイン2017-18』

展覧会『世界のブックデザイン2017-18』を鑑賞しての備忘録
P&Pギャラリーにて、2018年12月15日~2019年3月31日。

 

「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書に、7カ国(日本、ドイツ、オランダ、スイス、オーストリア、カナダ、中国)のコンクール入賞図書を加えた約200点の本を展示する企画。

 

入口付近の台では日本の「造本装幀コンクール」の入賞作品が展示され、その先の台で「世界で最も美しい本コンクール」(ライプツィヒで2018年3月開催)の入賞作品が並べられている。壁沿いにはカナダ、スイス、ドイツ、オーストリア、中国、オランダの各国のコンクールで入賞した本が立てかけられている。今回は、過去10回の「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書の紹介も合わせて行われている。

 

本展の特筆すべき点は、会場に並ぶ本を実際に手にとることができる点だ。デザイナーの仕事を紹介する展覧会などで本が展示されることがあるが、残念ながら手に取る機会は与えられないことが多い。本展では、日本の本だけでなく、海外の本までも手にすることができる。海外の本は、外国語で書かれているために、内容を理解することが難しいとしても、否、それゆえに、タイポグラフィや文字の組み方、注釈や図版の入れ方などをより純粋に視覚で捉えることをができるかもしれない。また展覧会カタログ、写真集、絵本やグラフィック・ノベルなどイラストレーションや図版に富んだ本も多く含まれるので、言語に問わず十分に楽しめるだろう。

 

日本(第52回造本装幀コンクール)の入賞作品では、フィル・ナイト(太田黒泰之訳)の『SHOE DOG 靴にすべてを』が目をひいた。黒字に金文字でタイトル、そこに赤いナイキのマークがあしらわれたもの。また、中学生向けの英語辞典『初級クラウン英和・和英辞典(第11版シロクマ版)』はシロクマが愛らしい、持っていたくなる辞典。

カナダ(2017アルクインソサエティ・ブックデザインコンクール)の受賞作品では、Eliza Robertsonの"Demi-Gods"の表紙に惹かれた。左手に白い水着の女性の左半身と水着の女性の右半身が顔をがそれぞれ見えない形で描かれ、空を背景に中央にはタイトルが浮かぶ。どんな内容の物語なのか知りたくなった。Andrew EdeとLesley B. Cormackの"A History of Science in Society: From Philosophy to Utility (Third Edition)"は余白をたっぷりとった見やすいレイアウトで、赤が効果的に用いられている教科書。Igor Hofbauerの"Mister Morgen"はロシア構成主義を髣髴とさせるデザインのコミックで、やはり赤の使い方が目をひく。Rebecca Greenの"How to Make Friends with a Ghost"
やHelaine BeckerとMark Hoffmannの"You Can Read"はいずれも愛らしい絵本。

ドイツ(ドイツの最も美しい本コンクール2018)の受賞作品では、Giovanni Frazzettoの"Nähe: Wie wir lieben und begehren"。白と黒をベースにオレンジが効果的。Pierre Pané-Farréの"Soirée Fantastique"はお祭りみたいな本。

オーストリアオーストリアの最も美しい本2017)の受賞作品では、Erwin Polancの写真集"8630 Mariazell"。表紙の女性のポートレートが異彩を放つ。