映画『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』を鑑賞しての備忘録
2017年のアメリカ映画
監督・脚本はダニー・ストロング。
原題は、"REBEL IN THE RYE"。
J・D・サリンジャー(ニコラス・ホルト)は、実業家になることを期待する父(ヴィクター・ガーバー)が反対する中、母(ホープ・デイヴィス)に背を押され、作家修業のため大学の文芸コースに通い始める。雑誌社へ持ち込む原稿はどれも採用されないが、担当教員のウィット・バーネット(ケヴィン・スペイシー)に才能を見出され、彼の編集する『ストーリー』誌へ短編作品の掲載が決まる。ウーナ・オニール(ゾーイ・ドゥイッチ)への恋心が実を結び交際を始めると、『ニューヨーカー』誌から作品掲載の話が飛び込んでくる。結末を含めた2箇所の重要な修正は承服しがたいものの、憧れの雑誌への扉が開いたのだ。ところが、日本の真珠湾攻撃により、アメリカが戦争に突入。時局に合わないと『ニューヨーカー』誌への作品掲載が見合わされただけでなく、やがてサリンジャー自身が戦地に赴くこととなった。バーネットに戦地でも執筆を続けるよう励まされたサリンジャーは、派遣されたイギリスで寸暇を惜しんで筆を執り続ける。自らの分身であるホールデンを描くことで、兵営での不安に耐えていた。ノルマンディー上陸作戦に始まる対ドイツ戦の最中で体験した悲惨な出来事は、彼の精神を荒廃させ、戦地での救いだった執筆活動は戦争と分かちがたく結びついたがゆえに復員した後に文章を書くことができなくなってしまう。
日本公開の2019年は、サリンジャーの生誕100年に当たるという。サリンジャーの人生がこれほど波瀾に富んだものであるとは知らなかった。2010年まで存命だったことにも驚いた。
へそまがり(rebel)だからこそ、雑誌の要求を超えて自分の作風を貫くことができ、20世紀を代表する画期的な作品を生み出すことができた。
サリンジャーという作家を描いているが居ているが、帰還兵の物語の性格が色濃い。第二次世界大戦に従軍し、生還した兵士の、その後の物語。
「インチキ(phony?)」のような言葉がキーワードとして盛んに発せされるのが印象的だった。