可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 淺井裕介個展『Daily Records ―Georgia, Istanbul』

展覧会『淺井裕介「Daily Records ―Georgia, Istanbul」』を鑑賞しての備忘録
NADiff Galleryにて、2018年12月21日~2019年2月3日。

淺井裕介の絵画展。

淺井裕介は、壁などにマスキングテープを貼り付け、そこに書き込みをしていくことで生まれる植物のような作品や、現地で採取した土と水で描く作品などを制作してきた作家。長期の休みをとることに迷いながらも、2018年にユーラシア大陸を巡る旅に出たそうで、その際に制作された作品の中から、ジョージアイスタンブルでの作品が展示されている。

まっさらの紙ではなく、本なのかパンフレットなのか、文字や絵のある紙に加筆するように描かれたドローイングが並ぶ。
とりわけ、田口まきによる写真に加筆した作品が印象に残った。路地や現地の人々のスナップ写真に、動物か植物か精霊かが描かれている作品群だ。白い自動車を背景に、父親(?)に後ろから抱えられた小さな女の子の写真では、様々な色が散らばって、車の背後には大きな狼のような存在が控えている。そして、右端には、母親(?)の蔭に半身を隠す女の子が写っている。この女の子がこれら写真にドローイングした作品を象徴している。恥ずかしがってなのか、なかなか姿を現してくれない何か。そういった存在を作家が生み出して描き込むのではなく、あたかもフロッタージュのようにその場に当然あるものを浮き出させただけといった、写真とドローイングとの一体感がある。現地に、多幸感ある瞬間が、たとえ一瞬でも間違いなく存在することを、作家の描く不可思議な存在たちが確信させてくれる。