可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 ポーラ・シェア個展『Serious Play』

展覧会『ギンザ・グラフィック・ギャラリー第371回企画展
ポーラ・シェア:Serious Play』
ギンザ・グラフィック・ギャラリーにて、2019年2月04日~3月25日。

グラフィックデザイナーであるポーラ・シェアを紹介する企画。

1階は地図をテーマにした作品16点から構成されている。《Tokyo》は、首都圏の鉄道路線図を描いたようなカラフルな作品。位置関係は大まかには合っているが、厳密ではない。おそらくは英語版の東京の地図や路線図を眺め、文字自体のつくる形や音をもとに、東京に対するイメージを組み立てたのだろう。東京湾が暗い色で塗られていて夜景をイメージさせるのが、地図で海が水色で表現されることに慣れている目に新鮮に映った。同時に、都市部のカラフルなデザインを際立たせる役目も担っている。おそらく、東京以外も同様に、地図の骨格は維持しつつ、思うがままに世界を組み立ているのだろう。

地階では、ポスターを中心に、シェアの作品を紹介している。《Best of Jazz》や《Great Biginnings》はロシア構成主義を思わせるような赤と黒を主体とした文字を力強く組み立てることで魅せる。1つの数字だけを扱う《The Number Series》では、欠けたハンガーを用いた"2"や円と半円(弧?)のみで力強い"9"が印象に残る。ロートレックへのオマージュ作品では、文字と「脚」を用いて、Moulin Rouge La Goulueのダンサーの再現が見事であった。

バナーやチラシからは、レトロなコンピューター・グラフィックスのようなイメージを受けるが、その予想を裏切る作品が並んでいる。1階の地図のシリーズは同じ作家であることが明白だが、地階の作品群はそれぞれかなり異なった作風に見える。作家性を強く打ち出すのではなく、ニーズやテーマに合わせて変幻自在な制作態度を採用しているのだろう。