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芸術鑑賞の備忘録

展覧会 デイヴィッド・ホックニー&福田平八郎二人展『二人のカラリストの出会い』


展覧会『二人のカラリストの出会い デイヴィッド・ホックニー|福田平八郎』を鑑賞しての備忘録
ART GALLERY THE CLUBにて、2019年2月16日~3月30日。

デイヴィッド・ホックニーと、彼が来日した際、目にして影響を受けたという福田平八郎の作品とを合わせて紹介する企画。

デイヴィッド・ホックニーの《The Yosemite Suite》から5点が紹介されている。単純な線や点を用いて、印象派の画家が取り組みそうな彩色の風景画を描いている。前景・中景・遠景を明瞭な線や滲むような線などで描き分けていることが明白で、版画の特性を活かし別々の版を組み合わせ、奥行きを出しているのだろうと思った。だが、これらの作品は、版画ではなくiPadで制作したものであった(技法としてiPad drawing printed on paperと記されている)。版ではなく、レイヤーだったようだ。改めて見れば、素人がコンピューターで描くような描線だ(現在のプロのイラストレーターはこんな「CGです」みたいな描線にしないように思う)。枝の先には光の軌跡(残像)であろう黄色い弧のような線が複数あり、太陽の光に輝く葉がそよぐ様を表現しているのがもう一つの特徴。平面の中に空間と時間とを再現しようとしている。
デイヴィッド・ホックニーがもう1点展示されている、プールを描いた作品《Litograph of Water Made of Lines, a Green Wash, and a Light Blue Wash》。この作品の右手には、福田平八郎の、鮎を描いた作品《鮎》が並べられている。ホックニーの作品は明るい日差しの中、プールの透き通る水がつくる細波とそれが水底につくる影とをとらえる。福田の作品は対照的に明るさはないが、鮎が泳ぐ水面に、鮎のように身をくねらせる波が描かれ、波の姿を表す点で共通する。ホックニーが日本で訪れた展覧会には福田の《漣》が展示されていたといい、その影響関係を示すべく並べたのだろう。水面・水中・水底というレイヤー、光・動き・時間というテーマは、ホックニーが新しいメディアに果敢に挑みながら、今日まで取り組み続けているようだ。
なお、福田平八郎の作品は他に《紅梅》、《白桃》、《花菖蒲》、《インコ》の4点が展示されている。