可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『伊勢裕人個展』

展覧会『伊勢裕人個展』を鑑賞しての備忘録
GALLERY b. TOKYOにて、2019年3月4日~16日。

伊勢裕人の絵画展。

《西蒲田叙景》は横幅の異なる9点の画面を3枚ずつ3列に組み合わせた作品。綿布のざらつきを活かした画面と樹脂による滑らかな画面とが混在する。茶色、黄土色、クリーム色、くすんだような青など画面ごとに塗り分けられるが、夕暮れから宵にかけての暗くなってゆく時間や、古びて薄汚れた界隈をイメージをさせて、統一感がある。雨を思わせる線、電柱、銭湯を髣髴とさせる「ゆ」の文字、右足などが別々の画面に描きこまれ、サンダル履きで銭湯に出かける人の姿があるような、緩やかな時間の流れる町を散策する気分を味わえる。画面を分割したことで、様々な人々の生活圏を共存させるとともに、偶然訪れた者が紛れ込む路地のような隙間が生まれている。古びや汚れは、生きる上で避けられないものであって、そこには清潔さや綺麗さでは掬い取れない生そのものがある。くすんだ画面に美しさを感じるのは、生の崇高をとらえているからではないか。なお、《西蒲田叙景》は、サイズの異なる画面9点からなる作品もあり、反対側の壁に向き合うように掛けられている。その他、電柱、月、外灯などの描かれた作品が並ぶ。