可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 松川朋奈個展『Love Yourself』

展覧会『松川朋奈「Love Yourself」』を鑑賞しての備忘録
Yuka Tsuruno Galleryにて、2019年3月9日~4月6日。

松川朋奈がシングルマザーを取材して制作した「Love Yourself」シリーズを紹介する絵画展。

母と子とを描いた作品を中心に、観葉植物を描いた作品が差し挟まれている。いずれも極めて写実的で、産毛や毛穴のような細部が入念に描き込まれている。また、それぞれに物語を想起させるタイトルが付されている。

《それでも、私が母親であることには変わりない》は、ピアスを外す女性を描いた作品。顔の左下部分(口から左耳にかけて)を画面左上に、左肩を画面右下に、画面の中心はピアスを外す両手が占めている。目に焼き付くのは、手に刻まれた細かな皺の数々だ。ファンデーションで塗り込められることのない裸の手こそ、生きてきたことの証しであり、作者はそこに崇高を見ている。ピアスや指輪などの煌びやかなアクセサリーは、執拗に描き込まれた皺を引き立てる脇役へと退く。表情をうかがうことはできないが、口許を伝う光が心情を訴え、静かな画面の中に潜む出来事へと鑑賞者を誘う。

私は、どんな環境にあっても、ひとり親が自分たちの行いを恥ずべきではない、自分の行動を強く信じるべきだと考えている。日本のすべてのひとり親が、子どもと自分自身を強く愛する気持ちを持つことを願って。

自らを愛することなくして他者を愛せようか。シングルマザーである作者が、同じ境遇にある者へ贈る"Fight Song"である。