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芸術鑑賞の備忘録

映画『バイス』

映画『バイス』を鑑賞しての備忘録
2018年のアメリカ映画。
監督・脚本はアダム・マッケイ(Adam McKay)。
原題は"Vice"。

ディック・チェイニー(Christian Bale)は、高校時代に知り合ったリン・ヴィンセント(Amy Adams)の助力でエール大学に入学したが、成績は振るわず、酒と喧嘩が原因で退学となる。ワイオミングに戻り、架線工事作業員として働くも、酒と喧嘩の生活は続いた。飲酒運転で2度目に収監された後、リンに諭されたチェイニーは更生を誓い、彼女と結婚する。1964年のことだった。5年後、ホワイトハウスインターンに職を得たチェイニーは、ニクソン大統領のスタッフであったドナルド・ラムズフェルド(Steve Carell)の下で政治家としての研鑽を積み始める。口数が少なく、言われたことのみを実行し、常に忠実なチェイニーは、ラムズフェルドに気に入られるが、ブリュッセルへの転任には付き従わなかった。その後のニクソン大統領の失脚は、ニクソンと距離があったラムズフェルドにとってはプラスに働いた。ホワイトハウスに呼び戻され、フォード大統領(副大統領から昇格)の主席秘書官となったのだ。ラムズフェルドが最年少で国防長官に転じると、チェイニーが主席秘書官の後釜に納まることになった。1976年にフォードが大統領選に敗れると、チェイニーは下院議員への立候補を決意する。ある日、リンに「酔わないと聞いていられない」と評される演説を終えた後、心臓の発作で倒れてしまう。チェイニーの療養中、リンは夫に代わって遊説し、保守層に訴えて見事当選させることに成功した。チェイニーは1979年から1989年まで下院議員としてキャリアを重ね、ジョージ・W・ブッシュ政権では国防長官を務めたが、予備選に出るには党内での支持率が低いこと、予備選の過程で娘メアリー(Alison Pill)が同性愛者であることを攻撃されることを避けるため、政界を退くことを決断する。チェイニーは資源開発企業ハリバートンのCEOに転じ、家族との穏やかな生活を送るのだった。

権力分立を否定する「一元的統治理論(unitary executive theory)」に魅入られた男チェイニーが9/11をチャンスと見て暗躍する悪夢のような現実を描く。

頭脳明晰なリンがゴロツキであったチェイニーを政治家へと育て上げる手腕。ただ、その背景には、『ビリーブ 未来への大逆転』でも描かれたアメリカ社会における「ガラスの天井」があることをリンが吐露する。

語り手はアメリカ市民のカート(Jesse Plemons)。彼はチェイニーを身内みたいなものだと言う。それがなぜかは最終盤で明らかにされる。

「vice-president(副大統領)」の"vice"は「~の代わりに」を意味するラテン語に由来するようだが、「悪徳」や「悪行」を意味する同じ綴りの"vice"は何に由来するのだろうか。

相続税」を「死亡税」に変える「印象操作」によって高額所得者に対する課税を引き下げるような手口。「FTA」や「移民」の「TAG」や「特定技能(新在留資格)」への言い換えでもお馴染みの、政権の常套手段。