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芸術鑑賞の備忘録

映画『ザ・プレイス 運命の交差点』

映画『ザ・プレイス 運命の交差点』を鑑賞しての備忘録

2017年のイタリア映画。
監督はパオロ・ジェノベーゼ(Paolo Genovese)。
脚本はイザベル・アギラル(Isabella Aguilar)とパオロ・ジェノベーゼ(Paolo Genovese)。
原作は、クリストファー・クバシク(Christopher Kubasik)の『The Booth~欲望を喰う男(The Booth at the End)』(アメリカのテレビドラマ)。
原題は"The Place"。

ローマ市内の、緩やかにカーブする通り沿いに、弧を描くファサードを持つ建物が立つ。その1階にカフェ「ザ・プレイス」がある。店内には、カウンター席とは別に、通りに面したガラス張りの壁沿いにテーブル席が並ぶ。入口から一番遠いテーブルには、一日中スーツを着た男(Valerio Mastandrea)が座っている。彼のもとには老若男女、様々な人たちが入れ替わり訪れる。彼らは自らが抱えている悩みを解消するための望みを一頻り語るのだ。男は黒皮の大きく厚い手帳を開いてメモをとり、彼らに望みの引き替えとなる条件を出す。強奪された金を捜す警官エットレ(Marco Giallini)は、誰かを血が出るまで殴るよう指示される。会計士のルイージ(Vinicio Marchioni)は、癌の息子を救うため、少女を殺害しなくてはならない。老婦人マルチェラ(Giulia Lazzarini)は、夫がアルツハイマー病から快復するために自作の爆弾で多数の人命を奪う必要がある。アッズッラ(Vittoria Puccini)は、夫が再び彼女を求めるようにするために、別の夫婦の関係を壊さなければならない。自動車修理工のオドアクレ(Rocco Papaleo)は、職場のポスターのモデルと一夜をともにするため、2週間少女の安全を守るよう指示される。マルティーナ(Silvia D'Amico)は、美しくなるために、10万ユーロと5セントの強盗を働く必要がある。神の存在を感じられなくなった修道女キアラ(Alba Rohrwacher)は、妊娠を求められる。盲目のフルヴィオ(Alessandro Borghi)が視力を取り戻すためには女性を犯さなくてはならない。

カフェ「ザ・プレイス」で繰り広げられる舞台作品のような映画。事件はカフェで起きてるんじゃない、現場で起きているんだ。だから観客は事件の事後報告のみを見せられていることになる。それでも最後まで飽かせず見せるのは、テンポ良く話を展開する脚本の妙だろう。

悩みを解消するための望みは、けっして自らは叶えられないものなのか。その望みは絶対に叶える必要があるものなのか。そもそも悩みは解消されなくてはならないものなのか。