可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『The 備前 土と炎から生まれる造形美』

展覧会『The 備前 土と炎から生まれる造形美』を鑑賞しての備忘録
東京国立近代美術館工芸館にて、2019年2月22日~5月6日。

備前市伊部地域を中心に施釉せず作られるやきもの「備前焼」を3つの章で紹介する企画。Ⅰ章は「源流としての備前焼」と題し、桃山時代の作例を中心に、室町時代後期から江戸時代初期にかけてつくられた「古備前」40点強を展示する。Ⅱ章「近代の陶芸家と備前焼」では、「備前焼中興の祖」と称される金重陶陽(1896-1967)の作品8点を中心に、近代作家の作品40点強を展観する。Ⅲ章の「現代の備前焼」では「備前焼」の新たな表現を模索する現代の作家の作品60点強を紹介する。

「土と炎から生まれる造形美」を一番感じさせたのは、陶板だった。陶板は、効率のよい焼成のために用いられた窯道具。大きな瓶を焼く際、大小の器物を同時に焼くため、瓶に蓋をするように置かれたもの。もともと鑑賞のために用いられていないために、ざらつきやひび割れや歪みなど、炎の遠慮の無い働きを楽しめる。器物の置かれた部分が「牡丹餅」と呼ばれる赤い丸の抜けの景色を無造作につくっているのも面白い。
次いで、和室に展示されている隠﨑隆一の《混淆陶筥》や《混淆三足角皿》の荒々しさが泥土と炎の格闘を感じさせて愉快だった。