可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 泉桐子個展『Limelight』

展覧会『泉桐子個展「Limelight」』を鑑賞しての備忘録
数寄和にて、2019年4月29日~5月7日。

泉桐子の絵画展。大小十数点の作品を展示。

石や木に刻み込むような線、大祓の人形のような人物、更紗文様のような植物の装飾から成り、黒絵式陶器やポンペイ壁画をも呼び起こす画面は、作風・印象だけでなく、既存のジャンルの超越という点においても、『月映』の木版画に連なる作品だ。とりわけ、人物の描かれ方が印象に残る。棟方志功の描いた、版木の閉ざされた空間にいっぱいに描き込まれた人物のように、何かに縛り付けられたような人物は、かえって、そこに封じ込められた得たいの知れない力を秘める。すると、人物に重ねられる花のような装飾は、その力を封じるための呪術だろう。なおかつ、人物を植物や壁で囲い込むことで、力の放散を防いでいる。絵画に厳重に密封された力が作品の強度を生み出す。