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芸術鑑賞の備忘録

映画『ドント・ウォーリー』

映画『ドント・ウォーリー』を鑑賞しての備忘録
2018年のアメリカ映画。
監督・脚本は、ガス・バン・サント。
原題は"Don't Worry, He Won't Get Far on Foot"。

ポートランドオレゴン州)に住むジョン・キャラハン(Joaquin Phoenix)は、幼い頃に施設に預けられ、母親についてはアイルランドアメリカ人であること、赤毛であること、教師をしていたことの3つしか知らない。オレゴン州の田舎町の養家で育ったが、孤独感に苛まれていたキャラハンは、13歳でジンを盗み飲んでその味を覚えて以来、酒を切らしたことがなかった。ある日、パーティーで出くわしたデクスター(Jack Black)に誘われて飲んで周りともに泥酔した帰り道、デクスターに運転させていたキャラハンの車が事故を起こす。デクスターは軽傷で済んだものの、キャラハンは脊髄を損傷して四肢が不自由になり、車椅子での生活を余儀なくされることになる。自宅では介護士のティム(Tony Greenhand)の世話を受け、障碍者福祉施設でリハビリを行うが、酒は手放せず、暴走して車椅子を頻繁に故障させるなどしては、ティムやソーシャルワーカースザンヌ(Carrie Brownstein)の手を焼いている。ある日、酒を飲もうとして瓶を落として途方に暮れていたとき、背後に母親の存在を感じて啓示を受けたキャラハンは、断酒会に参加することにする。そこで、ドニー・グリーン(Jonah Hill)という魅力的な人物と出会い、彼のもとで更正を志す。

 

主人公キャラハンが、ドニーの指導の下、自らの根柢にある孤独(=母親の喪失)という問題に気が付き、それに向き合っていく姿が描かれる。自ら描いた母親の似顔絵が聖母像のような役割を果たしている。

キャラハンは漫画家として成功した。そのため作中でも彼の漫画が随所に用いられる。だが、彼の漫画家としてのキャリアは、この作品ではあくまでも副次的なものとして扱われ、主題(母親の喪失からの回復)に焦点が合わされている。

キャラハンの恋人アヌー役のRooney Maraが、出演シーンは限られているものの鮮烈な印象を残す。