可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『貨物ステーション カモツのヒ・ミ・ツ』

展覧会『貨物ステーション カモツのヒ・ミ・ツ』を鑑賞しての備忘録
鉄道歴史展示室にて、2019年3月19日~6月23日。

鉄道貨物輸送について紹介する企画。

鉄道歴史展示室は、新橋停車場の駅舎を復元した建物内に開設されている。新橋停車場は、日本初の鉄道の起点として、1872年に開業した。鉄道は貨物輸送が先行するものだったが、日本では旅客輸送からの異色のスタートとなったという。貨物輸送は翌1873年に始まった。

現在、日本の貨物輸送はトラックが主体となっている。だが、環境負荷ができるという観点と、災害時における代替手段という観点から、鉄道による貨物輸送は重要である。とりわけ、2011年の東日本大震災では、高速道路・一般道路ともに寸断される中、貨物列車による石油輸送が注目を浴びた。災害時の代替輸送システムとして機能した。

貨物は歩かないため人がフルアテンドしなくてはならない。また、貨物自体は往復しない(片道乗車)ので、復路が空きにならないよう工夫しなくてはならない。後者について、中国の鉄道がヨーロッパまで貨物を運んだ後、ヨーロッパから中国に運ぶものがないため、海路で列車を運搬するという記事を新聞で読んだことがある。

「貨物新幹線」の構想がかつてあった。新幹線が標準軌であることから車両限界をいっぱいに活用し、コンテナを横向きに積載するシステムが検討されていた。旅客輸送終了後の時間を貨物輸送に利用しようとしたが、保守点検の時間がとれないことから実現しなかった。だが、車両限界を活用する研究は、2階建て車両の導入に大いに役立ったという。建築のアンビルド同様、実現しなかったものの有用性が認められた好例だ。構想や研究の価値は、近視眼的な見方や短絡的な発想のみで評価できないのだ。