可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 束芋個展『Ghost Running』

展覧会『束芋「Ghost Running」』を干渉しての備忘録
Gallery KIDO Pressにて、2019年4月27日~5月26日。

束芋の版画展。

腕や足や胴や頭部など、人体の一部が、直方体の空間の中に浮かんでいる。様々な角度から組織・構造を見るためにつくられた人体標本の入ったガラスケース。その標本ケースから流れ出すように、様々な色があふれ出している。プリズムによって分光された光が粘性を持った流体と化しているかのようだ。

理解する、分かるとは、分けることだ。人体を理解するためには、人体を切り分ける必要があった。腑分け(解剖学)である。だが、人体は、切開しなくても3D画像で捉えることができようになった。コンピュータによってディスプレイ(平面)の中に立体空間を再現し、様々な角度から、身体の構造を捉えることができる。コンピュータによるシミュレーション(疑似体験)だ。だが、シミュレーションでは、取りこぼしてしまうモノ・コトがある。それは、解剖学や医学の領域に限った話ではないだろう。コンピュータによって組み立てられた世界から流れ出してゆく、鮮やかで豊かな魅惑的な何か。それらを掬い取るべく手を差し伸べなくてはならない。