可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 岡部千晶個展『渚にて』

展覧会『岡部千晶展 渚にて』を干渉しての備忘録
JINEN GALLERY(A室)にて、2019年5月14日~26日。

岡部千晶の絵画展。

メインヴィジュルアルに採用されている《海は遠く》は、窓の向こうに浜辺を臨む赤い壁紙の部屋の中、ソファの前に佇む、イルカか何か海洋生物の頭部を持つ人物。赤のストライプの入った青いシャツに、タコの柄の黒いジャケットを重ねる。デニム生地の短パン、星とストライプという左右で異なる靴下につま先が黒い白いシューズに赤いシューレース。内股で立ち、手はだらりと下げ、ぎざぎざとした歯が並ぶ口のみが目立つのっぺりとした顔は下を向く。
《海は遠く》以外の作品でも動物のような頭部を持つ人物を描いた作品が目に付く。彼らはいずれもカジュアルな装いをしている。エジプトの神像あるいはキマイラというより、個性を誇張した人物の戯画に見える。また、星形のペンダント、星形を付した冠、星形の花など、星形も多くの作品に表される。さらに、海やプールや浴室といった水に関連したモチーフも鏤められている。

生命の誕生から幾星霜。生命は今日まで「進化」してきたとされる。果たして、生命はより優れたものへと変化して来たのだろうか。始原の海から遠く離れ、幾度も変容は経験したものの、「進化」などしてはいないのではないか。「進化」とは、星と星との間に恣意的に線を引き、都合良く描いた星座のようなものではないか。理想化された天球の星を地上に引きずり下ろし、現実の光を当ててみる。すると、水のように、かたちを変えながらも実体は同じモノが循環しているのではないか。そのとき、ヒトはイルカであり、トラである。