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芸術鑑賞の備忘録

映画『パリ、嘘つきな恋』

映画『パリ、嘘つきな恋』を鑑賞しての備忘録
2018年のフランス映画。
監督・脚本・主演はフランク・デュボスク(Franck Dubosc)。
原題は、"Tout le monde debout"。

ジョスラン(Franck Dubosc)は、世界的なスポーツシューズメーカーの販売を行うi-run社のフランス支社長。興味を惹かれる女性を見かけるとすぐに口から出任せに喋り倒し、口説き落とす日々。ある日、検診を任せている医師で、いつもつるんでいるマックス(Gérard Darmon)と昼食の最中、ジョスランは母の訃報を受ける。葬儀に参列した際、双子の弟ルシアン(Laurent Bateau)から一度母のすまいを訪れるよう合い鍵を渡されたジョスランは、久々に実家に足を踏み入れる。懐かしい写真を眺め、母の好んでいた音楽に夢中になっていると、隣家に越してきたジュリー(Caroline Anglade)がやって来る。たまたま母の車椅子に座っていたジョスランは、ヘルパーであるジュリーにいつでもお役に立ちますと言われ、歩けない態を装うことにする。後日、ジョスランからアプローチされたジュリーは、伯父の家でのパーティーにジョスランを誘う。車椅子で訪れたジョスランは、そこで、車椅子に乗ったジュリーの姉フロランス(Alexandra Lamy)に出会い、明朗でウィットに富む彼女にたちまち魅了されてしまう。パリに戻ったジョスランが、マラソン大会に向けた日課のランニングを終え執務室に戻ると、秘書のマリー(Elsa Zylberstein)から急な来客を告げられる。フロランスであることが分かって、慌てて机の上に座って応対するジョスラン。フロランスに、近くでテニスの試合があるから立ち寄ったと告げられ、ジョスランは試合会場を訪れることにする。車椅子を用いた白熱した試合に目を奪われたジョスランは、ますますフロランスに夢中になるが、その分だけ足が悪くないことを彼女に告げるのが難しくなっていくのであった。

 

ジョスランやマリーの発言・態度を通して、障碍に対する見方を浮き彫りにしつつ、説教くさくならないようギャグの中にメッセージを巧みに織り込んでいる。

快活なヒロインを演じたAlexandra Lamyの、車椅子、テニス、ヴァイオリンのそつの無い演技は素晴らしい(スタントのようなものは入っていないのだろうか?)。

奇矯な秘書を演じたElsa Zylbersteinのコメディエンヌぶりが印象的。「12年間も雇われてるなら気に入られてるだろ!」と思わずツッコミたくなる最終盤まで楽しませてもらった。

限られた字数・時間の枠に収めなくてはならない字幕翻訳の中でも、とりわけコメディは大変そうだが、今回は「足」・「立つ」・「座る」といった言葉が字幕に飛び交っていた。
"paris paris""banlieue banlieue"のような言葉遊びは、「タピオカタピオカしていない」のような、何でも繰り返す最近の日本語の用法と似ていて興味深い。
原題の"Tout le monde debout"の"debout"には、「立って」とか「しっかり」などの意味合い。