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芸術鑑賞の備忘録

映画『コレット』

映画『コレット』を鑑賞しての備忘録
2018年のイギリス・アメリカ合作映画。
監督はウォッシュ・ウエストモアランド(Wash Westmoreland)。
脚本はリチャード・グラツァー(Richard Glatzer)、ウォッシュ・ウエストモアランド(Wash Westmoreland)、レベッカ・レンキェビチ(Rebecca Lenkiewicz)。
原題は"Colette"。

19世紀末のフランス、ブルゴーニュのサン=ソヴァール=アン=ピュイゼイユ。シドニー=ガブリエル・コレット(Keira Knightley)は、傷痍軍人の父ジュール=ジョセフ・コレット(Robert Pugh)と母アデル=ユージェニー・シドニー(Fiona Shaw)とともに、豊かな自然の中で慎ましく暮らしていた。父の戦友の息子で、パリで「ウィリー」名義で作家をしているアンリ=ゴーティエ・ヴィラール(Dominic West)が時折顔を見せては、一家にパリの流行について辛口で紹介していた。ウィリーが訪問するのは実はガブリエルとの逢瀬のためで、やがて二人は結婚し、パリで生活を始めることになった。ウィリーはシュヴォブ(Al Weaver)やヴェベール(Ray Panthaki)といった無名の若手作家たちに大まかな構想を与え、彼らに作品を執筆させることで次々と新刊を発表していた。しかしウィリーの尽きることのない放蕩と散財とは資金繰りを悪化させ、支払いを滞らせたウィリーの下から作家たちが離れていってしまう。ウィリーは、それまで手紙の代筆のみ任せていたガブリエルに小説を書かせてみることにする。ガブリエルが書き上げた『学校のクローディーヌ』と題された作品は、登場するキャラクターこそ面白いものの、形容が多く、読者を引き込むテクニックにも欠けていた。ウィリーに出版を断念すると告げられたガブリエルはショックを受け、ノートに記された自らの名前に打消し線を入れるのだった。数年後、ウィリーのもとに執行官が訪れ、机や箪笥が運び出されることになった。机の中身を取り出す際、ウィリーは打ち捨てていた『学校のクローディーヌ』のノートを発見する。追い詰められていたウィリーは、ガブリエルに指示を与え、読者の気を惹く内容へと改稿させる。そして、完成した『学校のクローディーヌ』は、ウィリーの作品として売り出され、爆発的な売れ行きを示すことになった。

 

コレットは名前くらいしか知らず、『クローディーヌ』という作品も知らなかった。Keira Knightleyが、時代や環境の厳しい制約の中で、同性愛を謳歌し、舞台に立つなど、徐々に自らの思いを実現していく才女を体現し、説得力があった。衣装や髪型によって、コレットの変化を視覚に象徴させていた。それにしても当時の「クローディーヌ旋風」の凄まじさたるや。

コレット(ガブリエル)が、ウィリーに伴われて初めてサロンを訪れるシーン。夫の用意した赤いドレスを着るのを拒否し、サロンでは銀の皿に置かれていた宝石を鏤めた亀に同情する。当時の女性に求められた役割と、それに対するコレットの反抗とを短時間で表している。

イギリス・アメリカ合作映画なので仕方が無いが、やはりフランス語で演じて欲しかった。とりわけコレットが文章をフランス語で綴るシーンなどは大いにも違和感がある。

映画『メアリーの総て』(ハイファ・アル=マンスール監督)で描かれたメアリー・シェリーは当初『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』を匿名で出版せざるを得なかった。メアリーの時代から100年、コレットもまた当初は夫の名で作品を発表せざるを得なかった。