可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『ガラスの城の約束』

映画『ガラスの城の約束』を鑑賞しての備忘録
2017年のアメリカ映画。
監督はデスティン・ダニエル・クレットン(Destin Daniel Cretton)。
脚本はデスティン・ダニエル・クレットン(Destin Daniel Cretton)とアンドリュー・ランハム(Andrew Lanham)。
原作はジャネット・ウォールズ(Jeannette Walls)の回想記『ガラスの城の約束(The Glass Castle)』。
原題は"The Glass Castle"。

ニューヨーク誌にコラムを連載しているジャネット・ウォールズ(Brie Larson)は、金融アナリストの婚約者デイヴィッド(Max Greenfield)の顧客とのディナーに同席し、辛辣さとユーモアとを湛えた発言で場を盛り上げていた。両親について話を振られると、母は画家で、父は低品質の石炭の効率的燃焼を研究していると答える。商談がまとまり、ジャネットは先に帰宅するためドギーバックを手にタクシーに乗り込む。途中、タクシーが急ブレーキをかけた際、車窓に母ローズ=メアリー(Naomi Watts)がゴミを漁る姿が目に入る。そしてタクシーを停めたのは酩酊した父レックス(Woody Harrelson)であることに気づいた。ジャネットは父に気付かれないようにしてやり過ごすが、近くデイヴィッドとの婚約を父母に知らせなくてはならないと気が重かった。
かつて、アルコール依存症のレックスは、自由を求めて定職に就かず、画家の妻ローズ=メアリーと娘のローリ(Olivia Kate Rice)、ジャネット(Chandler Head)、ブライアン(Iain Armitage)を連れて放浪生活を送っていた。ある日、8歳のジャネットが、絵を描くのに夢中な母に代わりに自らソーセージを茹でていたところ、服に引火させてしまい腹部に大火傷を負う。病院に担ぎ込まれたジャネットは十分な食事を提供され満足だった。ウォールズ一家が揃って見舞いに訪れると、レックスはブライアンに叫び声をあげさせて病院スタッフの注意を惹きつけさせ、その隙にジャネットを担いで車に乗り込み逃走した。レックスは運転しながら、ガラスで覆われた家の建築プランを語る。レックスは相応しい敷地を求めて転々としているのだという。病院で医師に学校へ通うべきと言われたとジャネットが父に告げると、本当の教育は体験すべきものだと、車道から外れ荒野を走行して皆を楽しませる。沙漠の中にローズ=メアリーが絵心をくすぐられる木を見つけ制作を始めると、一家は野営することにする。真夜中、物音を恐れたジャネットが父を起こすと、父はジャネットの美しさと強さを讃え、魔除けのためとナイフを手渡す。再び一家は住まいを求めて移動を開始するが、空き家を見つけてごくわずか滞在しては再び移動を余儀なくされることが繰り返された。ローリ(Sadie Sink)、ジャネット(Ella Anderson)、ブライアン(Charlie Shotwell)に加えモーリーン(Eden Grace Redfield)を抱えたローズ=メアリーは、レックスがこれまで避けてきた故郷ウェルチを目指すことを宣言する。

 

娘ジャネットの父レックスとの愛憎劇が中心に描かれる。レックスはアルコール依存症で生活破綻者という救いようのない父なのだが、4人の子供たちの中でとりわけジャネットに期待をかけている。父が時折見せる愛情と知性とが、ジャネットとの絆を切れる寸前のところでつなぎ止めている。ハッピー・エンディングではあるが、それにいたるまでの過程は鑑賞者の心情を刺激するもので、親子・家族のあり方をめぐっては様々な意見を惹起しそうだ。

父レックスの問題の原因もかなり深刻(これも親子関係)。死の床で自らの問題を悟り、吐露する発言は、幼いジャネットとの交流に回帰する内容で切なかった。