可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 水野里奈個展『思わず、たち止まざるをえない。』

展覧会『水野里奈「思わず、たち止まざるをえない。」』を鑑賞しての備忘録
ポーラ ミュージアム アネックスにて、2019年7月12日~28日。

水野里奈の絵画展。

《洞窟の入口》と題した作品がある。洞窟があると示されることで、先を見通すことは出来ない岩壁の中に、奥へと連なる空間の広がりが期待される。洞窟の入口は、鮮やかな色彩で通りがかる者の来訪を誘惑する。暗いディスプレーに、様々イメージを映し出していくインターネット空間の表象と解するのは安直に過ぎるか。
花や木などの植物、岩壁、机や椅子、敷物や壁、階段や屋根、水流あるいは気流、光線、幾何学的な図形。人工と自然、屋内と屋外とが渾然と一体化した世界が描かれる《FLAVOR》や《SCENT》では、インターネットや絵画が不得手とする感覚がタイトルに冠される。鑑賞者がその感覚を味わいたければ、描かれたイメージをたどるべく画面に没入する他に無い。
横山大観の《生々流転》のクライマックスを思わせるような黒白の渦が描かれた壁。そこに掛けたキャンヴァスに描かれた《青の宮殿》は、《FLAVOR》や《SCENT》、《山脈の中のお屋敷》といった作品の延長上にある。五十歩の距離から五百光年先へと接続するような、日常に宇宙を取り込もうとする意欲が表されている点で、スケールが異なっている。ボールペンのチップで回転するボールを天体の運動へと連動させんとする野心を感じる。
そして、改めて、《洞窟の入口》とは、作者の自作解題であったのだと気付く。