可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 和田ひびき個展

展覧会『和田ひびき展』を鑑賞しての備忘録
JINEN GALLERYにて、2019年7月16日~21日。

《座》や《ビル》は、それぞれ共通の人物と背景を描きつつ構図の異なる2つの画面を併置した版画。後者では、ビルの屋上の人物の影が壁を超えてそのまま空間へと伸びるように描かれた画面と、ビル群の上空に浮遊する人物の影までもが浮遊するかのように描かれた画面とが組み合わされる。影の描き方ひとつで、ビルの密集する都会のありうる光景を異化し、画面に惹きつけさせる効果を生んでいる。
《なかわる》、《ゆめ》、《火事》、《倉庫》などの絵画作品では、明るいピンクやオレンジと青との取り合わせと、スピード線、クローズアップの描き込み、コマ割り的な複数画面など漫画の技法(?)の採用とにより、ポップな世界が立ち現れる。その軽やかな世界の中に存在する、人物の腕の異様な長さ、菓子のパッケージの唐突な挿入、似たような人物の肖像の複数の配置などの持つ一種の過剰性が、見る者に擦過傷を残す。