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芸術鑑賞の備忘録

映画『やっぱり契約破棄していいですか!?』

映画『やっぱり契約破棄していいですか!?』を鑑賞しての備忘録

2018年のイギリス映画。
監督・脚本は、トム・エドモンズ(Tom Edmunds)。
原題は、"Dead in a Week: Or Your Money Back"。

真夜中に橋の欄干に後ろ手でつかまり、今にも投身自殺を図ろうとする青年ウィリアム(Aneurin Barnard)。そこへ老紳士(Tom Wilkinson)が通りかかる。ウィリアムは老紳士に自殺の邪魔立てはされたくなかったが、老紳士はウィリアムに自殺の意志があるのか確認はするものの自殺をとめることはなく、ただウィリアムの動向を観察するのだった。気が散るからとウィリアムが追い払うと、老紳士は名刺を差し出して去って行く。ウィリアムは遂に川面に向かって身投げする。そこに客船が通り過ぎ、ウィリアムは軽傷で死を免れる。ウィリアムは小説家志望で出版社に原稿を送っていたが、採用されることはなかった。自殺も何度も試みてきたが、成功せず、帰宅後にガス栓を開けて再度自殺を図るも、ガスが止められていて未遂に終わる。そのとき、老紳士から渡された名刺のことを思い出し、取り出して見ると、老紳士の名はレスリーといい、肩書きは「暗殺者」となっていた。ウィリアムはレスリーに電話を入れることにする。一方、暗殺者組合に所属するレスリーも追い込まれていた。長年暗殺者の仕事を生き甲斐に暮らしてきたが、レスリーは組合が設定する暗殺数のノルマを達成できるか微妙だった。レスリーは自殺の名所に足を運んで営業をかけている中で偶然ウィリアムに出遭ったのだった。長年連れ添う妻のペニー(Marion Bailey)は、レスリーとの世界一周旅行を話題にして、レスリーが抱える長年携わってきた仕事から離れる不安を和らげようとするが、レスリーにはまだ受け容れられない。カフェでウィリアムに落ち合ったレスリーは、パンフレットを呈示し、希望の殺され方を選ばせる。道路に飛び出した少年を救ったものの後からやって来たトラックに轢かれ、看護師に抱きかかえられた状態で死ぬという英雄型のプランがウィリアムの理想だったが、資金を用立てできそうにない。結局、2,000ポンドの予算内に収まる、入金から一週間以内に狙撃されるプランで成約となった。ところが、指定の口座に入金後に、ウィリアムにエリー(Freya Mavor)という編集者から電話があり、原稿をぜひ出版したいと持ちかけられるのだった。

 

ウィリアムの死への願望が、小説家として成功しないということからではなく、ある出来事のトラウマから生じていることが明らかにされる。また、他人の死をコントロールしてきたレスリーが自らの退職(死)をコントロールできない状況に置かれる。死が本来コントロールできないものでありながら、コントロール可能なものと取り違えてしまうことをコメディに仕立てて訴える。

作家ウィリアムや暗殺者レスリーが表舞台に立つが、実際に事態を動かしているのは、主婦ペニーや編集者エリーの力であることが描かれている。

作者の消したい奴を消してやる願望が若干作中で叶えられている?