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芸術鑑賞の備忘録

映画『荒野の誓い』

 

映画『荒野の誓い』を鑑賞しての備忘録
2017年のアメリカ映画。
監督・脚本は、スコット・クーパー(Scott Cooper)。
原作は、ドナルド・E・スチュワート(Donald E. Stewart)。
原題は、"Hostiles"。

1892年、ニューメキシコ州フォート・ベリンジャー。ジョセフ・ブロッカー大尉(Christian Bale)は、トーマス・メッツ曹長(Rory Cochrane)らと、逃亡したアパッチ族を捕縛し、砦に拘引する。その晩、メッツ曹長はブロッカー大尉に鬱病と診断されたことを告げ、長年にわたるインディアン戦争で疲弊したと打ち明ける。ブロッカー大尉は彼を慰め、二人は昔話に興じる。翌早朝、ブロッカー大尉はアブラハム・ビッグス大佐(Stephen Lang)の執務室に急遽呼び出される。ハリソン大統領からの指示で、収監中のシャイアン族の首長イエロー・ホーク(Wes Studi)と彼の家族のブラックホーク(Black Hawk)、 エルク・ウーマン(Q'orianka Kilcher)、リヴィング・ウーマン(Tanaya Beatty)、リトル・ベアー(Xavier Horsechief)を故地であるモンタナの居留地まで護衛することになった。ついてはシャイアンの言葉に通じたブロッカー大尉にその任務を下命する。ブロッカー大尉は多くの戦友を殺されたシャイアン族に対する怨念を述べたて拒否しようとするが、ビッグス大佐は軍法会議や年金の受給権を楯に24時間以内の出発を命じる。ブロッカー大尉は、メッツ曹長(Rory Cochrane)やヘンリー・ウッドソン伍長(Jonathan Majors)らの長年の同僚に、陸軍士官学校卒の有望株ルディ・ギダー中尉(Jesse Plemons)と、ビッグズ大佐の肝煎りでフランス語混じりのフィリップ・デジャルダン上等兵(Timothée Chalamet)を加え、分遣隊を構成する。行軍開始から間もなくブロッカー大尉は停止し、パレードはここまでだと、イエロー・ホークとブラックホークを鎖で拘束する。山中を進むうち、視界が開けた崖の上から、眼下に黒焦げになった入植者の住居を発見する。ビッグズ大佐は、ギダー中尉に野営の準備とイエロー・ホークたちの監視を委ね、メッツ曹長とウッドソン伍長とともに廃墟の調査に向かう。廃墟の手前には頭皮を切り取られた男( Scott Shepherd)の遺体があり、廃墟からはカリンバの音が流れてくる。建物に突入すると、そこにはカリンバを奏でながら赤子をあやす女(Rosamund Pike)がいた。


19世紀末のアメリカ開拓地を舞台に、殺戮に携わる軍人の苦悩や病理、戦争が生み出す応報感情などを描き出すことで、戦争の悲惨を訴える。誇り高きインディアンの首長イエロー・ホークの佇まい・振る舞いと、それに徐々に感化されていく主人公ブロッカー大尉の姿に、繰り返される惨禍を克服するための処方箋が託されている。タイトル"Hostiles"が表示された後、文字が一つ一つ消えていき、"i"がわずかに消え残るのは、自らと敵対者とが相互にお互いの存在を感じ合う関係を築く様を示す、作品のメッセージを象徴している。