映画『見えない目撃者』を鑑賞しての備忘録
2019年の日本映画。
監督は森淳一。
脚本は藤井清美と森淳一。
原案は、2011年の韓国映画『ブラインド(블라인드)』(アン・サンフン(안상훈)監督)。
警察学校を優秀な成績で卒業した浜中なつめ(吉岡里帆)は、警察官としての新生活を迎える前にいったん実家に戻る。高校生の弟・大樹(松大航也)を夜の繁華街に見かけたなつめは、屯していたグループから大樹を引き離し、車に乗せる。なつめの説教にふてくされた大樹は助手席でアクセサリーを取り出して見ていたが、足下に落としてしまう。拾うようにしつこくせがまれたなつめが運転しながら拾おうとしてトラックにぶつかりそうになり、急ハンドルをきったところ車は激しく横転してしまう。なつめはトラックの運転手に助け出されたものの、事故の衝撃で視力を失い、樹は炎上した車から脱出できずに亡くなってしまう。警察を依願退職したなつめは自殺を図り、事故から3年経った今でも精神科にかかっている。母・満代(松田美由紀)はなつめに新しい生活を始めてもらいたいと大樹の墓参になつめを連れ出すが、なつめは墓地まで来たところで踵を返し、満代の制止も聞かずに盲導犬パルと歩いて家へと向かう。下り坂の高架下を通過したところで、すぐ脇をスケートボードが通過する音がして、それから間もなく前方の高架を抜けた所で車が急停車し、スケートボードの人物が転倒するのを耳にする。停車した車の窓を叩く音がして、若い女の子が助けを求める声を上げているのを聞いたなつめが名前を問うと「レイサ」との答えが返ってくる。間もなく車を離れていた運転手が戻り、車にすがるなつめを無視して走り去る。なつめの通報で駆けつけた長者町警察署のベテラン刑事・木村友一(田口トモロヲ)と働き盛りの刑事・吉野直樹(大倉孝二)はなつめに事情聴取を行うが、なつめに視覚障碍がある上に精神科の通院歴があることから、なつめの主張する誘拐事件に該当するのか疑いを持つ。それでもなつめの証言をもとに二人は近隣のスケートボードの練習場で聞き込みを行い、なつめが遭遇したスケートボードの人物が国崎春馬(高杉真宙)という高校生と判明する。春馬が女性の同乗者など見ていないと主張したため、木村は事件性がないと判断し、捜査は打ち切りとなった。満代から警察の捜査が打ち切りになったと聞いたなつめは納得がいかず、自らスケートボード場へ向かい、春馬を問い質すとともに協力を依頼する。なつめの必死さに打たれた春馬は、運転手からもらった金を証拠品として手渡すとともに、「レイサ」を見つけるために名簿屋をしている横山司(渡辺大知)を紹介する。地元の学校の名簿に「レイサ」はヒットしなかったが、ネットを検索したところ「レイサ」を源氏名とする女性が3名ヒットする。なつめと春馬はその中で18歳の「レイサ」に目星をつけ、彼女が在籍するイメクラへ向かう。店主(星田英利)は「レイサ」はもう辞めたとすげない対応だったが、店を出たなつめに一人の少女が声をかけるのだった。
韓国映画を原案としていることもあってか、心に傷を負う女性主人公をハードボイルドのテイストで比較的ドライに描く。犯人が判明するまでの紆余曲折の謎解きと犯人判明後の犯人とのスリリングな応酬とがテンポ良く展開し見飽きることがない。
眼が見えないことからの恐怖と、眼が見えないことの強みとがともに描かれる。音声による状況把握を視覚化する表現の工夫も面白い。
吉岡里帆と高杉真宙のコンビも、田口トモロヲと大倉孝二のコンビもともに良い。とりわけ田口トモロヲ演じる定年間近の木村友一刑事が浜中なつめの熱意に焚き付けられてじわりと変わる様が良い。田口トモロヲはもっとアクの強い(キャラクターを演じている)印象があったが本作の木村友一はそのイメージを払拭していた。