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芸術鑑賞の備忘録

映画『ホテル・ムンバイ』

映画『ホテル・ムンバイ』を鑑賞しての備忘録
2018年のオーストラリア・アメリカ・インド合作映画。
監督は、アンソニー・マラス(Anthony Maras)。
脚本は、ジョン・コリー(John Collee)とアンソニー・マラス(Anthony Maras)。
原題は、"Hotel Mumbai"。

2008年11月26日。インドのムンバイ。五つ星を獲得するタージ・マハル・パレス・ホテルの従業員アルジュン(Dev Patel)は、子守を約束していた義妹が現れないため、やむを得ずクリーニングの仕事をしている臨月の妻のもとに娘を預けて出社する。慌てていたため職場で履く靴を落としてしまったアルジュンはサンダルのまま、本日担当するレストランの厨房に向かう。総料理長オベロイ(Anupam Kher)は物乞いのような恰好で職場に姿を現わすなとアルジュンに帰宅を促すが、臨月の妻のためにどうしても働きたいと食い下がり、仕事場の予備の革靴で業務に加わることを許される。その日迎えるVIPは2組。イギリス系の遺産相続人ザーラ(Nazanin Boniadi)とその夫であるアメリカ人建築家デヴィッド(Armie Hammer)。そして、ロシア人のワシリー(Jason Isaacs)だった。ホテルがVIPの対応を開始した頃、「ブル」が指揮するイスラーム過激派のテロリストたちが、世界遺産に登録された歴史的建造物でもあるチャトラパティ・シヴァージー・ターミナス(CST)駅や、旅行者に人気のレストラン「レオポルド・カフェ」など、複数の場所で無差別の銃撃を行っていた。混乱が拡大する中、タージ・マハル・パレス・ホテルに逃亡を図る人も現れ、ホテルは受け入れの判断を行うが、その中にはテロリストたちも含まれていた。そして、ホテルのロビーでテロリストによる銃撃が始まる。銃声を聞いたアルジュンは明かりを消す指示を出すとともに、客たちにテーブルのかげに身を潜めるよう求める。ザーラとデヴィッドは、赤子のキャメロンと乳母のサリー(Tilda Cobham-Hervey)を部屋に置いてレストランに降りて来ており、その安否について気が気でない。オベロイらホテルのスタッフは警察に救援を要請するが、テロ対応の訓練を受けておらず、しかもテロリストからの攻撃を受けた警察は混乱し、デリーからの特殊部隊の到着を待つほかに打つ手がなかった。だが、その間にもテロリストによる殺戮計画は着実に進行していくのだった。

 

テロリストによる襲撃が始まってからは間断無く緊張感漲る展開。日常的な空間が突然戦場と化し、限られた情報しかなく恐怖で疑心暗鬼に陥る中、ひたすら隠れ逃げ惑う人々の姿が映し出される。
一人でも多くの犠牲者を生み出すべく容赦ない殺戮を繰り広げる若きテロリストたちが「ブル」と呼ばれる指導者の「声」に敵意を煽られ操られる様子を描くことで、彼ら自身もまた被害者としての側面を有することを示す。
自らも死の恐怖に苛まれながら、ゲストの救出を最優先に、徒手空拳でテロリストに立ち向かい犠牲になるホテル従業員たちの姿に感銘を受ける。
当時のニュース映像が随所に差し挟まれ、悲惨な事件が現実に起きた出来事であることが観客に伝えられる。