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芸術鑑賞の備忘録

映画『英雄は嘘がお好き』

映画『英雄は嘘がお好き』を鑑賞しての備忘録
2018年のフランス映画。
監督は、ローラン・ティラール(Laurent Tirard)。
脚本は、ローラン・ティラール(Laurent Tirard)とグレゴワール・ビニュロン(Grégoire Vigneron)。
原題は、"Le Retour du héros"。

ナポレオン帝政下のフランス。軽騎兵のシャルル=グレゴワール・ヌヴィル大尉(Jean Dujardin)は、ブルゴーニュの小さな町の名門ボーグラン家の屋敷に馬で乗りつける。ヌヴィル大尉は令嬢ポリーヌ(Noémie Merlant)に結婚を申し込み、承諾を得る。ところが、そこへ対オーストリア戦争への召集命令が届く。戦地に向かうヌヴィル大尉にポリーヌが手紙を求めると、ヌヴィル大尉毎日でも手紙を書こうと請け合う。しかし、数ヶ月経っても、ヌヴィルの手紙はポリーヌのもとに届かない。戦地にいるのだからとの家族の慰めも虚しく、憔悴したポリーヌは肺炎にかかってしまう。ポリーヌの恢復には希望が必要だとの医師(Hugues Martel)の言葉に、ポリーヌの姉エリザベト(Mélanie Laurent)はヌヴィル大尉を装い手紙を書くことにする。エリザベトは屋敷に届いた手紙の中に「ヌヴィル大尉」からの手紙を紛れ込ませ、手紙が届いたと騒いでみせる。ポリーヌのベッドの周りに集った
ボーグラン氏(Christian Bujeau)とボーグラン夫人(Evelyne Buyle)の前でエリザベトが手紙を読み上げると、皆は大喜び。ポリーヌもリンゴを囓る気力を取り戻し、返事を書くと言い出す。エリザベトは戦地に手紙を届けるのは難しいと返信を断念させようとするが、召使い(Mathilde Roehrich)がパリの司令部に送れば届きますと言ってポリーヌを喜ばせる。エリザベトは町に出る用事があるからと偽って召使いから返信を受け取って開封すると、性的な欲望の露わな文面に驚く。エリザベトは再び「ヌヴィル大尉」としてポリーヌに貞淑さを忘れないよう念を押す手紙を認める。以後、エリザベトはポリーヌを楽しませるために「ヌヴィル大尉」の様々な冒険譚を手紙に記していく。オーストリア戦役での活躍後には、仏領インドの首府ポンディシェリに渡って植民地経営に従事するとともに、タバコ農園を手に入れたことにもなっていた。大きくなりすぎた話の辻褄を合わせようと、エリザベトはイギリス軍に包囲されてポリーヌに別れを告げる手紙を書き、血を滴らせておく。ポリーヌはヌヴィルとの再会を諦め、ニコラ(Christophe Montenez)との結婚を決意するのだった。時は流れ、ポリーヌはニコラとの間に二人の子を設け、幸せに暮らしていた。ある日、町に出かけたエリザベトは、乗合馬車からヌヴィル大尉によく似た浮浪者が降りてくるのを目にする。

ポリーヌと、彼女のつくり出した虚像の「ヌヴィル大尉」に乗っかるヌヴィルとの鬩ぎ合いの顛末。才知に長けたポリーヌが、場当たり的なヌヴィルをやり込めようとしながらも、なかなか上手くいかない。そこに機微が隠されている。