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芸術鑑賞の備忘録

映画『ボーダー 二つの世界』

映画『ボーダー 二つの世界』を鑑賞しての備忘録
2018年のスウェーデンデンマーク合作映画。
監督は、アリ・アッバシ(Ali Abbasi)。
脚本は、アリ・アッバシ(Ali Abbasi)、イサベラ・エクルーフ(Isabella Eklöf)、ヨン・アイビデ・リンドクビスト(John Ajvide Lindqvist)。
原作は、ヨン・アイビデ・リンドクビスト(John Ajvide Lindqvist)の小説"Gräns"。
原題は、"Gräns"。

ティナ(Eva Melander)は独特の風貌により幼い頃からいじめられてきた経験を持つ。現在は、老人福祉施設にいて記憶が覚束なくなってきている父ビルガー(Sten Ljunggren)から譲り受けた、森の中にある家でひっそりと暮らしている。一人で生活する不安をかき消すため、ローランド(Jörgen Thorsson)を居候させているが、彼は品評会に出す犬を飼育して明け暮らし経済力は無く、その上ティナを邪慳にして我が物顔で振る舞っている。ティナには類い稀な嗅覚に恵まれ、人の罪悪感や恥の感覚までも感知することができた。彼女はその能力を活かして税関で働いている。ある日、スーツを着た男(Viktor Åkerblom)がティナの前を通ったとき、ティナは彼に禍禍しいものを感じる。同僚のトーマス(Matti Boustedt)が手荷物検査で問題なしと判断したが、ティナは電話を取り出すよう要求する。ティナが電話のカバーの隙間からメモリーカードを発見すると、男は慌ててそれを奪い口に入れ呑み込もうとした。トーマスがロバート(Andreas Kundler)に声をかけメモリーカードを回収すると、そこには児童ポルノが記録されていた。翌日、ティナの前を、ティナに似通った風貌の男(Eero Milonoff)が通りかかる。ティナは彼のバッグを検査することにする。バッグにはミールワームのような虫が入ったケースや「虫の孵化器」と称する怪しげな装置が入っていた。ティナは男を問題ないとして通過させた。ティナは上司のアグネタ(Ann Petrén)に呼ばれ、児童ポルノの摘発がなぜ可能だったのか問われる。ティナが自分の特殊技能について説明すると、アグネタは、男の電話から児童ポルノの出所の可能性のあるエリアを割り出したが、特定の人物を探り当てることができていない状況を説明し、ティナに捜査の前提となる情報収集に当たるよう依頼する。後日、再び虫の孵化器を持っていた男が税関でティナの前を通過する。ティナは男の徹底的な検査を主張する。

 

孤立状態から同士を得て大きな喜びを得たにも拘わらず、考え方の違いから仲違いし、再び孤立へ向かうプロット。ティナの特殊な風貌や行動(感情の表し方)が安易な共感を拒絶するgräns(境界、限界)のように観客の前に立ちはだかる。それだけに孤独や悲しみに苛まれながらも、gränsを往き来するティナには軽やかさを感じることになる。

取り替え子(Changeling)の話がこのように巧みに織り込まれているとは。