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芸術鑑賞の備忘録

映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』

映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』を鑑賞しての備忘録
2018年のイギリス・フランス・アメリカ合作映画。
監督は、ジュリアン・シュナーベル(Julian Schnabel)。
脚本は、ジャン=クロード・カリエール(Jean-Claude Carrière)、ジュリアン・シュナーベル(Julian Schnabel)、ルイーズ・クーゲンベルグ(Louise Kugelberg)。
原題は、"At Eternity's Gate"。

フィンセント・ファン・ゴッホ(Willem Dafoe)は、田舎道で、羊の群れを連れた若い女性(Lolita Chammah)に出くわす。彼は彼女に近づき、スケッチさせて欲しいと頼む。彼女は突然の申し出に面食らい怪訝な顔でなぜスケッチするのか​​と尋ねる。
ゴッホはパリのカフェで展覧会を開催する。グループ展の予定だったがの呼びかけに応じる画家はいなかった。やむを得ず壁面を全て自作で飾ったゴッホに、カフェのオーナー(Vincent Grass)が作品を今すぐ撤去するよう要求する。何か気に入る作品がないかと尋ねるゴッホに、オーナーは一つとして無いと断言する。
カフェの隅で、ゴッホは、弟で画商のテオ・ファン・ゴッホ(Rupert Friend)と、画家たちがグループを結成する話し合いをしているのを聞いている。売れない作家は売れる作家の下働きをすべきだというルールが提案されると、一人の画家(Oscar Isaac)が憤然として席を立ち、階級制度など間違っていると言い放ちカフェを後にする。感銘を受けたゴッホがその後を追い、話しかける。ポール・ゴーギャンと名乗るその男は、自由な絵画を求めてマダガスカルへ渡るという。パリに耐えられないと言うゴッホに対して南へ向かえと提案する。
南仏・アルルに向かったゴッホは、ミストラルが窓をたたく寒い部屋で一人、脱いだ靴を描き始める。

 

画家を描いた映画の中でもかなり優れた作品。
Willem Dafoeが「フィンセント・ファン・ゴッホ」として画面に現れている。そして「ゴッホ」を至近距離から手持ちカメラでブレを気にせず撮影することで、密着ドキュメンタリーのような効果を生んでいた。また、冒頭シーンをはじめ、カメラはゴッホ自身の目線にも立ち、揺れる画面はゴッホの不安定な心裡を表現していた。さらに途中からは、ゴッホ目線の画面では下半分のピントがぼかされ、衰弱する精神を視覚的に表現していた(あるいは左耳の欠如に伴う世界の表現か)。
麦わら帽の画家が絵を描きに行く自画像そのままに「ゴッホ」がそこら中を歩きまわり、走り、寝転がる。黄金色の畑や幽鬼のようなひまわりなど、ゴッホの描いた作品のモティーフが画面に取り込まれていく。靴や木の根の作品など制作過程を見せる作品については実際にゴッホらしく制作しているのも素晴らしい(医師ガシェの肖像などしっかりとMathieu Amalricが描かれている)。
ミストラルより厳しい世間が、ゴッホが精神を病んでいく原因になっていることが表現されていた。
(イギリス・フランス・アメリカ合作映画のため)フランス語と英語(ゴッホとテオとの会話など)とが用いられていたが、実際にはフランス語とオランダ語か。