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芸術鑑賞の備忘録

映画『グレタ GRETA』

映画『グレタ GRETA』を鑑賞しての備忘録
2018年のアメリカ映画。
監督は、ニール・ジョーダン(Neil Jordan)。
原案は、レイ・ライト(Ray Wright)。
脚本は、レイ・ライト(Ray Wright)とニール・ジョーダン(Neil Jordan)

原題は、"Greta"。

ニューヨークのレストランでウェイトレスをしているフランシス・マッカレン(Chloë Grace Moretz)は、帰途、地下鉄を降りる際、車内に上等なハンドバッグが置き忘れられているのに気が付く。深夜で遺失物係は既に閉まっていたため、やむを得ず持ち帰ることにする。エリカを同居させてくれている友人のエリカ・ペン(Maika Monroe)がバッグに気が付き、まずは爆弾処理班を呼ぶべきだったなどと言いながらバッグの中身を確認し、財布のお金で腸内洗浄でもしようと誘う。エリカの関わるべきでないとの忠告も聞かず、翌日、フランシスは名刺にあるグレタ・ハイデグ(Isabelle Huppert)という女性の住所にバッグを届けに行く。フランシスを出迎えたグレタは鞄が見つからなくて困っていたと言い、ちょうど淹れ立てだからと珈琲をを振る舞う。ドンドンと壁を叩くような大きな音がすると、グレタは隣で改装でもしているのかしらと静かにするよう壁に向かって声をかける。グレタはピアノを演奏してみせ、3年前に亡くなった夫から習った ピアノが唯一の慰めで、リストの曲が好きだという。娘はピアノの勉強でパリにいるとグレタが孤独を託つ姿に、先年、母を失ったフランシスは強い同情の念を抱く。かつて犬を飼っていたが、選び方が分からないと言うグレタに、フランシスは、母がブリーダーだったから犬を選ぶ手伝いならできますと伝える。その気になったら連絡を入れるというグレタは、使い方がよく分からないとフランシスに電話を渡す。フランシスは連絡先を入力してグレタの家を出る。程なくしてグレタからフランシスに電話があり、やはり犬を手に入れたいから選ぶのを手伝って欲しいと頼まれる。後日、動物管理センターを訪れた二人は、グレタの提案でPTS(Put To Sleep=安楽死)を最も間近に控えた犬を引き受けることにする。頻繁にフランシスと会い、パーティーにさえ一緒に行こうとしないフランシスに、エリカは深入りは危険だと改めて忠告し、母親の存在を埋め合わせようとしているだけだと言い放つ。フランシスは怒ってグレタの自宅での夕食会へと
向かう。二人で食事を準備をしている最中、フランシスは棚から道具を取り出そうとして、地下鉄て見つけたバッグと同じ型のバッグがたくさん並んでいるのを見つける。バッグの背にはそれぞれ拾い主らしき名前と電話番号が記載された附箋が貼られていた。ショックを受けたフランシスは食事もあまり通らず、体調が悪くなったと、グレタが食事を持ち帰る用意をするというのも断り、グレタの家を後にする。寄託したフランシスは忠告を聞くべきだったとエリカに謝り、グレタからの連絡に応答しないことにしたが、グレタはフランシスに何通でもメールを送り、何度でも電話をかけてくるのだった。

 

孤独感に苛まれた人間の業を、グレタの暴走をエキセントリック気味に描く事で、揶揄している。過剰な描写・演出をあえて用いて、逆にリアリティを弱め、恐怖を和らげる意図を感じた。
むしろ、恐いのは、事態が深刻になるまで、ストーカーの被害者に対して職場や捜査機関などが動いてくれないことかもしれない。
メールやSNSなどオンラインだけでの情報のやり取りによる、なりすましのトリック。近時の映画ではすっかり定番になっている。
フランシスとエリカが映画を見に行き、フランシスが予告編を見て泣いてしまうことをエリカに指摘させることで(なお、3D上映のためメガネをかけている)、フランシスが(母の死で)精神的に参っていることを表現しているのが面白い。
Maika Monroeのオレンジ(だったと思う)の粗い織り目のセーターから黒い下着が透けている姿が素敵だった。そのシーンの内容が入ってこない。

あまりIsabelle Huppertの作品をご覧になっていない方には、近年の作品なら、『アスファルト(Asphalte)』(2015年)を強くお薦めする。
Chloë Grace Moretzの近年の出演作として『アクトレス~女たちの舞台~(Sils Maria)』(2014年)や『サスペリア(Suspiria)』(2018年)が極めて素晴らしい。但し、彼女はどちらでも脇役にまわっている。
Maika Monroeは、『HOT SUMMER NIGHTS/ホット・サマー・ナイツ(Hot Summer Nights)』(2018年)でのヒロインが印象に残る。