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芸術鑑賞の備忘録

映画『LORO 欲望のイタリア』

映画『LORO 欲望のイタリア』を鑑賞しての備忘録

2018年のイタリア映画。

監督は、パオロ・ソレンティーノ(Paolo Sorrentino)。

脚本は、パオロ・ソレンティーノ(Paolo Sorrentino)とウンベルト・コンタレッロ(Umberto Contarello)。

原題は、"Loro"。

 

サルデーニャ。広大な敷地の広がるヴィラ。一頭の羊が丘を上がり、開け放たれた窓から邸宅の中へと入り込む、正面のテレビではマイク・ボンジョルノ(Ugo Pagliai)司会のクイズ番組などが映っている。羊が画面を眺めている間、エアコンの温度はどんどんと下がっていき、羊は震え始める。そして、エアコンが0度を示し、羊がその場に崩れ落ちると、エアコンの電源は切れる。
ターラント。セルジョ・モッラ(Riccardo Scamarcio)は、地元政治家とともに沖合に停泊しているクルーザーに乗船している。そこへ水着姿の若い女性を乗せたボートが近づき、セルジョは彼女をクルーザーに乗り移らせる。セルジョは彼女に水着を取るよう促し、政治家を誘惑させる。セルジョは地元政治家を籠絡して利権を手にしてきたのだ。だが地方で燻っていることに飽き足らないセルジョは、政界進出を決意し、シルヴィオ・ベルルスコーニ(Toni Servillo)に近づくことにする。セルジョは妻タマーラ(Euridice Axen)を伴い、ローマに向かう。

 

実在の政治家シルヴィオ・ベルルスコーニらをモデルとして、欲望や愛や老いを描く。
ベルルスコーニの気持ちの悪い覆面のように貼り付いたような笑顔は、ホラー映画でも使えそう。
イタリア情勢に無知なため、描かれている内容で、よく分からない部分も多々ある。だが、麗しい女性たちの姿に長尺も乗り切れるだろう。
当然として描く必要が無かっただけなのかもしれないが、政治やスキャンダルはあえて後景に退けられ、その分、登場人物の心情や思考を描き出すことに意を用いているように感じられた。
作品冒頭は羊のアップで始まるが、、それがおそらく国民の比喩になっているように、映像によるメタファーが鏤められている。冒頭とラストとの際だった対比(昼と夜、ヴィラと災害現場、羊(保護されるべき対象、救いを求める人間)と救助隊員(キリスト像=羊飼いを救出))がとりわけ利いている。
シルヴィオ・ベルルスコーニ(Toni Servillo)とヴェロニカ・ラリオ(Elena Sofia Ricci)、シルヴィオ・ベルルスコーニとステッラ(Alice Pagani)のやり取りが印象に残る。
数々の女性がまぶしい姿態を晒して登場するが、Alice Paganiの美しさは際立っていた(ベルルスコーニのご執心も納得)。