可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『ELLE LOVES ART』

展覧会『ELLE LOVES ART』を鑑賞しての備忘録
KASHIYAMA DAIKANYAMAにて、2019年11月16日~17日。

ELLE Japon』の創刊30周年を記念した展覧会。「LOVE」をテーマに15組の作家が寄せた作品を紹介するGALLERY Aの展示(一部作品はチャリティ・オークションを実施)と、キュレーターに片岡真実を迎え、15名の女性作家を紹介するGALLERT Bの展示「彼女たちが見る世界 日本女性アーティストの30年」との2部構成。

 

GALLERY Aでは、写真家エレン・フォン・アンワースがハート型の木の洞にヌードの女性を潜り込ませた《Tree of Love》、中山路子描くすっくと立つシロフクロウ、大竹彩子の力強い「女神」《LOVE FOR YOU》が目をひいた。

 

GALLERY Bでは、冒頭に設置された笹本晃の映像作品《Delicate Cycle》がとりわけ印象的。子供時代の自身の残虐さ(閉じ込めや虫の解体)や落書きされた記憶と、ジャン=アンリ・ファーブル、とりわけ「スカラベサクレ」のエピソードに触発されて生まれた作品。洗濯槽に閉じこもったり、自ら制作した装置《Hex-Washroom》に入って転がったりすることで、いじめる立場からいじめられる立場へ、観察する側から観察される側へ、と立場を反転させる。その立場反転行為はdo(行為)をundo(元通り)にする、一種の「洗濯」行為であり、清めの儀式による救済へと繋がるのだろう。
ミノムシの生態(メスはミノをつくりオスが飛来するのを待つ)に女性の立場を重ね合わせ、華やかな衣服の切れ端でミノムシにファッショナブルなミノをつくらせるAKI INOMATAの《girl, girl, girl,,,》は、笹本晃とは逆にミノムシにヒトを擬態させている。
片山真理の写真《hole on black》は自らの左右の手の指先を合わせることで暗闇の中に穴を開ける一種の「自画像」だろう。黒、白、赤が織りなす落ち着いた画面の洗練さが際立つ
近藤亜樹の《ティータイムは絶対に》は青い磁器のティーセット描く、ごく穏やかな静物画だが、なぜか強い印象を放つ。器に配された赤い影は、供物として天上に浮遊する様を表わすのだろうか。