可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『子どもへのまなざし』

展覧会『上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」』を鑑賞しての備忘録
東京都美術館〔ギャラリーA・C〕にて、2019年11月16日~2020年1月5日。

公募団体に所属作家を紹介するシリーズ「上野アーティストプロジェクト」の第3弾。「子どもへのまなざし」をテーマに、地下2階ギャラリーCでは、日本美術院の新生加奈の紙本彩色作品8点、一陽会の大久保綾子の油彩画など8点、独立美術協会の志田翼のアクリル画など10点、新制作協会の豊澤めぐみの作品8点を、地下3階ギャラリーAでは、主体美術協会の山本靖久の作品11点と二紀会の木原正徳の油彩画など10点を紹介する。

大久保綾子の作品について
《マリアの住む街(Ⅰ)(1996)、《生命ー海の音》(2002)など、画面の中に巨大な女性像と、その周りに子供たちの姿が描かれている。新古典主義の時代のピカソを彷彿とさせるが、ピカソの作品では女性はあくまで人物が描き出されている。だが、大久保の作品では、人物像というよりもむしろ構造物のように屹立し、あるいは環境や世界として表されているように思われる。「母なる」という言葉が連なっていく先にはスケールの大きい世界が広がっているが、その言葉の世界を図像化とも言えそうだ。また、子どもを含んだ作品を選び出しているためにまとまりを感じるのは当然であるが、1992年の作品から2019年の近作まで作風に強い一貫性が認められた。