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芸術鑑賞の備忘録

映画『マザーレス・ブルックリン』

映画『マザーレス・ブルックリン』を鑑賞しての備忘録
2019年のアメリカ映画。
監督・脚本は、エドワード・ノートン(Edward Norton)。
原作は、ジョナサン・レセム(Jonathan Lethem)の小説『マザーレス・ブルックリン(Motherless Brooklyn)』。
原題は、"Motherless Brooklyn"。

1950年代のニューヨーク市。フランク・ミナ(Bruce Willis)の探偵事務所の所員であるライオネル・エスログ(Edward Norton)とギルバート・コニー(Ethan Suplee)が車に乗って待機している。トゥレット症候群を患うライオネルは、いつものように不意に場違いな言葉を大声で発してしまう。さらに緊張感からセーターの袖の糸を引っ張っる動作を止められず、ギルバートに糸が目立たないように裁ってもらう。そこにボスのフランクが現れ、二人に指示を出す。今から指定された部屋に向かうので一定時間が経過したら電話をかけること、電話口で待機して建物に近づく者を報告すること、電話口で会話の内容を聞き取り記憶すること、「トイレに行く」と言うのを聞いたら二人で援護に入ること。ライオネルは突飛な言動で周囲を困惑させるが、人並み外れた記憶力の持ち主で、フランクは彼を高く買っていた。フランクはギルバートにライオネルの指示に従うよう言い含めると、建物に入っていく。ライオネルは電話ボックスに向かい、指示通り電話をかける。異様に巨大な体格の用心棒らしき男も含め、黒い服に身を固めた男たちがフランクのいる部屋へ向かった。フランクは男たちからある女性の身辺を洗っていることについて詰問され、フランクはその女性に関する情報を取引材料に一山当てようとしているようだった。フランクが頑なな態度を貫くために事態は悪化し、フランクは遂に「まずはトイレに行く」と発する。ライオネルはギルバートとともに護衛に向かうが、フランクは車で連れ去られてしまう。二人が後を追うが、車を見失ってしまい、フランクに向けられた発砲でようやく見つけることができる。二人がフランクのもとに駆けつけたときには男たちは既に逃走し、ゴミ捨て場に倒れていたフランクは背後から打たれ銃弾が腹部を貫通していた。フランクは二人によって車へ担ぎ込まれる際、被っていたホンブルグハットを回収するよう言いつける。病院に搬送するが、フランクは虫の息。ライオネルはフランクの身に何が起こったのかを聞き出そうとするが、"Formosa"という言葉を残して息絶えてしまう。ライオネル、ギルバート、そしてダニー・ファントル(Dallas Roberts)とトニー・ベルモント(Bobby Cannavale)の4人の所員はいずれも孤児院にいたところをフランクに拾われていた。フランクは単なるボスに止まらない存在で、4人の失意は大きかった。ライオネルはフランクの妻ジュリア(Leslie Mann)のもとに遺品を届けるが、夫婦仲が冷え切っていたため、彼女からは何の手がかりも得ることができなかった。ジュリアには腕時計以外の遺品を引き取る意思がないため、ライオネルに委ねられることになった。翌日、ライオネルが事務所を訪れると、警察の捜索を受けた後で、部屋中が散らかっていた。ジュリアは自宅にも警官がやってきて下着の入った引き出しまで調べられたとお冠。しばらく親類に身を寄せるのでトニーを中心に事務所を切り盛りするよう言い置いて事務所を後にする。ライオネルはそれまでの浮気調査の担当から外され、当面は送迎依頼の担当になる。ライオネルは事務所で電話番をしながら、電話口で聞いたフランクと男たちの会話の記憶とフランクの遺した"Formosa"という言葉を頼りに、フランクが殺されるに至った背景を探り始める。

 

"If!"などと突然奇声を上げてしまうトゥレット症候群を患う私立探偵ライオネルが主人公。周囲からは"Freak Show"などと蔑まれながらも、その類い稀な記憶力でボスのフランクから信頼され、その信頼が支えだったライオネルにとって、フランクの突然の死はあまりにも痛切だった。ボスであり友人であるフランクの死の謎を解明するため、症状を抑えられないまま危険な捜査にのめり込んでいく。様々なハンデを背負った主人公が描かれてきただろうが、トゥレット症候群を主役にした映画はかつてあったのだろうか。鑑賞者にとって、最初はかなり違和感
があるが、ライオネルのひたむきな生き様に絆されて、次第に受け容れられるようになっていく。

Bruce Willisが格好いい。本作や『ムーンライズ・キングダム(Moonrise Kingdom)』のようなキャラクターを演じているところをもっと見たい。