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芸術鑑賞の備忘録

映画『フォードvsフェラーリ』

映画『フォードvsフェラーリ』を鑑賞しての備忘録

2019年のアメリカ映画。

監督は、ジェームズ・マンゴールド(James Mangold).

脚本は、ジェズ・バターワース(Jez Butterworth)、ジョン=ヘンリー・バターワース(John-Henry Butterworth)、ジェイソン・ケラー(Jason Keller)。

原題は、"Ford v. Ferrari"。

 

1960年代のアメリカ。キャロル・シェルビー(Matt Damon)は、ル・マン24時間レースを制覇した唯一のアメリカ人ドライバーだった。だが生きていること自体が幸運だと医師に告げられるほど深刻な心臓疾患のため、引退を余儀なくされる。シェルビーは「シェルビー・アメリカン」社を設立し、理想のスポーツカーを製造することに余生を捧げることにする。イギリス出身のレーサーであるケン・マイルズ(Christian Bale)は、自動車修理工場を営みながら、ドライバーとしてカーレースへの参戦を続けていた。マイルズは激しい気性の持ち主で荒っぽい客あしらいしかできず、工場の経営状態は極めて厳しかった。だが妻モリー(Caitriona Balfe)は、彼の本領はコースでこそ発揮されると夫を支え、息子のピーター(Noah Jupe)も父親のことを誇りに思っていた。販売不振に悩むフォード・モーター・カンパニーの社長ヘンリー・フォード(Tracy Letts)は事態打開を模索し、アイデアを出すよう社員に檄を飛ばした。販売戦略担当役員のリー・アイコッカ(Jon Bernthal)は、映画スターはフォードに乗らず、フェラーリに乗るものだ、一番速い車を製造こそしているからこそフェラーリは憧れの的となっているのだと指摘し、フェラーリの買収を進言する。フェラーリは交渉に応じ、アイコッカが最終交渉のためイタリアのフェラーリ本社を訪れる。会長エンツォ・フェラーリ(Remo Girone)と面会するが、調印は引き延ばされ、結局破談となる。フェラーリはフォードによる買収をフィアットにリークすることで、フィアットからより良い条件を提示されることを狙っていたのだった。フェラーリに利用された上、現在のトップは所詮は偉大なる創業者の息子に過ぎないと侮蔑されたヘンリー・フォードは怒り心頭に発し、フェラーリが常勝しているル・マン24時間レースで勝てるレーシング・カーを製造するよう厳命する。アイコッカはアメリカでル・マンを最もよく知る男であるキャロル・シェルビーの元を訪れ、フォードのために車をデザインするよう依頼する。シェルビーはまたとないチャンスに興奮し、一流のレーサーでありメカニックでもあるケン・マイルズをチームに引き入れるようとする。だが、マイルズはフォードに不信感を抱いており、色よい返事をしない。

 

自動車やカー・レースについての知識・興味がなくとも楽しめるのは、何より主演のMatt DamonとChristian Baleがともに魅力的な男を演じ、バディものとしても優れているからだろう。巨大企業の狡猾さや組織の力関係なども分かりやすく描き込まれ、単なるサクセス・ストーリーではない、苦みのある展開も良い。

Caitriona Balfeが気っ風がいいケン・マイルズの妻モリーを好演。目を見張るようなシルエットが自動車修理工場の裏口に姿を現す登場シーンからして痺れる。