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芸術鑑賞の備忘録

映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』

 

映画『テリー・ギリアムドン・キホーテ』を鑑賞しての備忘録

2018年のスペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル合作映画。

監督は、テリー・ギリアム(Terry Gilliam)。

脚本は、テリー・ギリアム(Terry Gilliam)とトニー・グリゾーニ(Tony Grisoni)。

原題は、"The Man Who Killed Don Quixote"。

 

テレビコマーシャルのディレクターであるトビー(Adam Driver)は、ドン・キホーテが風車を巨人だとして突撃するシーンを用いたコマーシャル・フィルムを制作するに当たり、スペインでの撮影を敢行する。風車を動かす装置の故障などトラブルが続発し、プロデューサー(Will Keen)らが取りなすが、トビーは女性スタッフ(Paloma Bloyd)にちょっかいを出すなどして撮影に身が入らない。結局その日の撮影は中止となり、滞在先のホテルのレストランで反省会をしていると、トビーの上司(Stellan Skarsgård)が妻ジャッキ(Olga Kurylenko)を同伴して現れる。トビーと上司とが話している間、ジャッキが言葉を交わしていた物売りの男(Óscar Jaenada)の箱から、上司がトビーの仕事の刺激になればと適当に掴み出した商品は、映画『ドン・キホーテを殺した男(The Man Who Killed Don Quixote)』のDVDだった。上司がイタリアへ出張することになっていたため、ジャッキはトビーを部屋に連れ込む。だがトビーはジャッキをベッドに置き去りにして、DVDを鑑賞し始める。映画は学生時代にトビーがスペインで撮影したものだった。そこへ出張へ向かったはずの上司が戻ってくる。トビーは慌てて部屋を飛び出す。翌日、トビーはバイクを借りて撮影現場からほど近い学生時代に映画を作った村(ロススエーニョ)を再訪することにする。靴屋のハビエル(Jonathan Pryce)をドン・キホーテに、酒場の主人ラウル(Hovik Keuchkerian)の娘アンヘリカ(Joana Ribeiro)をヒロインにキャスティングして撮影したのだった。ラウルの酒場を訪れると、ラウルから、映画がきっかけで娘はマドリードに出て堕落してしまったと非難される。失意のトビーは帰りがけに「ドン・キホーテは生きている」という看板を見つける。案内に従って廃屋のような場所にたどり着くと、老女 (Inma Navarro)から金をせびられる。金を渡すと、小屋の中に案内され、そこにはシーツに『ドン・キホーテを殺した男』が投映されていた。映像の音声が生々しいと感じたトビーがシーツをめくると、そこにはドン・キホーテの扮装をしたハビエルその人がいた。ハビエルは自らをドン・キホーテであり、現れたトビーを従者のサンチョ・パンサであると信じて疑わないのだった。

 

現実と虚構とが綯い交ぜになり、次々と降りかかる災難によって虚構の世界の渦中に飲み込まれていく感覚を、トビー(Adam Driver)の立場を通じて味わうことができる。テンポ良く転回し飽きさせない。