可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 人見元基個展『大人になれないサピエンス』

展覧会『人見元基「大人になれないサピエンス」』を鑑賞しての備忘録
GALLERY MoMo Ryogokuにて、2020年1月25日~2月22日。

人見元基の彫刻展。彫刻12点を中心にエスキースも含めて展示されているため、両者を比較しながら見るのが面白い。
《我が悪魔よ!》(2019)は、人間の頭蓋骨の頭部を持つ羽を広げた大鷲とオオカミ、さらに目を持つ雲とに囲まれた少年のレリーフ。少年は裸体だが、羊のような角の兜を被り、左手には目のある楯、右手でロケット弾のようなものを支えている。近くに展示されている下絵と比べると、ロケット弾の位置がずれている。下絵では下半身からある程度引き離されており、構想段階ではアトリビュートとしての性格が濃い。だが、彫刻では下腹部により近い位置から突き出しており、背後の頭をもたげるように湧き上がる入道雲のキャラクターと相俟って、ファルスとしての性格がより強調されている。少年の表情には、自身の力への目覚めと性欲に突き動かされる戸惑いとが同居している様が窺える。樟に鑿や彫刻刀を入れる段階で、より生々しい力が感じられたのかもしれない。
《雪降る海の》(2019)は、バイ貝のような貝殻を被り、クラゲのような下半身を持つ少女の彫刻。貝殻と髪の毛により目が隠されているのは下絵と同様だが、彫刻では、貝殻と髪とがつくる影が、端正な容貌にミステリアスな雰囲気を与えている。また、クラゲのような下半身のつくるパニエのような膨らみも、下絵では存在しなかった魅力が彫刻の段階で生まれたものと言える。