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芸術鑑賞の備忘録

映画『レ・ミゼラブル』

映画『レ・ミゼラブル』を鑑賞しての備忘録
2019年のフランス映画。
監督は、ラジ・リ(Ladj Ly)。
脚本は、ラジ・リ(Ladj Ly)、ジョルダーノ・ジェデルリーニ(Giordano Gederlini)、アレクシス・マネンティ(Alexis Manenti)。
原題は、"Les misérables"。

2018年。郊外のモンフェルメイユの団地に住む少年イッサ(Issa Perica)らは、パリの目抜き通りに繰り出し、FIFAワールドカップで沸く群衆の輪に加わる。
バス(Al-Hassan Ly)もまたモンフェルメイユの団地に住む少年。ドローンを使って団地住民の生活を覗き見るのを楽しんでいたが、撮影を少女たちに知られ、一部動画を送信して残りは消去するよう脅される。
シェルブールの警察署の地域課に勤務していたステファン・ルイス(Damien Bonnard)は、モンフェルメイユ市の警察署に異動になる。離婚した妻が引っ越したため、息子に会う機会をつくろうと転勤を志願したためだった。地域の防犯対策に当たる組織の昼勤チームに配属され、クリス(Alexis Manenti)とグワダ(Djebril Zonga)と行動を共にすることになる。署長(Jeanne Balibar)はクリスの暴走に懸念を抱いており、ステファンに警官としての職務を逸脱しないよう訓示する。早速クリスのチームはパトロールに出る。車で流しながら、クリスは新人のステファンに監視対象者や出所者などを紹介していく。屯する少女たちに近づいたクリスは、「喫煙」を理由に彼女たちを脅し、その現場を撮影しようとした少女のスマートフォンを取り上げてたたき壊す。団地を仕切る「市長」と呼ばれる男(Steve Tientcheu)のもとに顔を出してステファンを紹介し、サラー(Almamy Kanoute)のケバブ店にステファンを送り込む。
ゾッロ(Raymond Lopez)が率いるサーカス団の一行が「市長」のもとに押し寄せる。団地の黒人の少年に仔ライオンを盗まれたと主張し、24時間以内に取り戻すよう要求する。一触即発の状態を駆け付けたクリスらが取りなし、その場はひとまず収まる。クリスは「市長」に捜索を要求するとともに、SNSを駆使して情報を集めることにする。間もなくしてクリスは仔ライオンを抱くイッサの姿を発見するのだった。

権力を振りかざす人間の残忍で愚かしい醜悪な姿と、彼らに抑圧される弱い立場の人間たちの耐え忍ぶ姿とがまず丁寧に描かれる。仔ライオンをめぐる事件をきっかけに話が一気に緊張感を高めて転がり始め、最後の最後まで鑑賞者を惹き付けて放さない。