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芸術鑑賞の備忘録

TVドラマ『レンタルなんもしない人』第1話

TVドラマ『レンタルなんもしない人』第1話を鑑賞しての備忘録
監督は、草野翔吾。
原作は、レンタルなんもしない人(森本祥司)『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』。
脚本は、政池洋佑。

出版社で雑誌の編集をしていた契約社員の大宮亜希(志田未来)は、雇い止めにあい、栃木の実家に戻ることにする。東京生活の最後の思い出づくりをしたいが、友達とでは重くなりすぎる。そこで、ただそばにいるだけのサービスを提供する「レンタルなんもしない人」に東京タワーへの同行を依頼する。現れた「レンタルさん」(増田貴久)に興味が湧いた亜希はあれこれと質問をぶつけるが、納得ずくではあるものの朴訥な返事が返ってくるのみ。そんな「レンタルさん」と東京タワーの展望台に上って記念写真を撮った亜希は、何かあると、否、何も無くても訪れた河川敷に向かう。その場限りの相手である「レンタルさん」に気を許した亜希は、自分の来し方を語っていく。

 

遠藤周作の随筆に「桜は鏡」がある。自分の心次第で桜が変わって見えるが、翻って、桜は自分の心を映す鏡であるという。サトウハチロー作詞の「リンゴの唄」に「リンゴはなんにも いわないけれど リンゴの気持は よくわかる」とあるが、リンゴに見ているのはやはり自分の姿なのであり、リンゴの気持ちとは自分の気持ちなのだ。だからこそリンゴの気持ちが腑に落ちるのである。「レンタルなんもしない人」は、遠藤周作の桜であり、サトウハチローのリンゴであろう。亜希は「レンタルさん」に自分の心を映し出すことができた。だから鏡を見て身だしなみを整えるように、自分の気持ちを整理することができたのだ。別言すれば、『レンタルなんもしない人』は二酸化マンガンのような触媒であり、亜希の決心を促す働きをしているとも言えよう。